仙台89ERSの「小さな巨人」志村雄彦(34)が、B1復帰の使命を背負ってシーズンインする。Bリーグ2部(B2)は今日30日に開幕。東地区の仙台はホームに中地区のFE名古屋を迎え撃つ。昨季B1からB2降格の屈辱を味わった志村は、司令塔としてレギュラーシーズン全60試合出場を目標にチームの勝利に貢献することを誓った。29日は仙台市内で調整した。

 志村がコートを動き回った。ゲーム形式の練習では正確なパスを出し、連係プレーがうまくいかなかった時は指示を出した。仙台在籍10シーズン目の開幕。「あまり気負いはない。シーズンを通して、勝ちを積み重ねられる試合をしたい」。来年2月に35歳になるベテランは静かに言った。

 仙台の顔であり、身長160センチの「小さな巨人」。だがBリーグ元年の昨季は、悔しさばかりを味わった。旧NBL勢の栃木、A東京、千葉などにほとんど歯が立たず、B1の18チーム中、最下位18位に沈んだ。富山とのB1残留プレーオフ1回戦に連敗し、B2降格が決まった直後のインタビューでは号泣した。

 ここ数年「1年1年が勝負」と言い、引退をにおわせてきたが今季も仙台のユニホームを着る。「やり残したことがある。B1から落とした責任がある」と力を込めた。仙台市生まれ。「いい結果を残して、恩返しをしたい」と地元愛も貫く。今季から指揮を執る後藤敏博ヘッドコーチ(HC、51)は「ずっと頼りにしている。困った時にゲームの流れを立て直してくれると思う」と期待した。

 3月に第1子の長男が誕生した。「家族が増えたことは、僕にとってのモチベーション」と話す。激しい守備から速いテンポで攻撃に転じるのが、後藤HCの掲げるバスケット。志村は司令塔のポイントガードとして、それを体現することが求められる。「60試合に出ることが目標」。厳しいB1を戦い抜いた経験も強み。FE名古屋戦は途中出場が濃厚だが、1シーズンでのB1復帰へ、いよいよ幕が開く。【久野朗】