女子SPでシニア1年目の坂本花織(17=シスメックス)が国際スケート連盟非公認ながら自己ベストの73・59点をマークし、首位に立った。8月に急きょ変更したSP曲「月光」の成熟度を日に日に高め、今季9戦目で優勝すれば決定の五輪代表へ好発進した。2位は73・23点の宮原知子(関大)で、3位は70・48点の本郷理華(邦和スポーツランド)。フリーは23日に行われ、2枠の五輪代表は24日に発表される。
夏、頭を抱えて泣いた「月光」が、満席の観衆の総立ちを誘った。坂本は豪快にリンク中央で拳を握った。国際スケート連盟非公認ながら初めて70点を超え「点数合ってんのかなと思った。こんなにうれしいことは久しぶり」ととんとん拍子に関西弁が口を突いた。
緊張は序盤のステップでほぐれた。得意のジャンプに持ち込むとフリップ-トーループの連続3回転など、3つ全てで加点を得た。最後のスピンは「危なかったけれど、意地でこらえた」と笑いながらも最高評価のレベル4。取材エリアでは「よっしゃー」と跳びはねて大興奮だった。前戦のGPスケートアメリカで2位に入った勢いそのままに、ライバルひしめく五輪代表レースで飛び出した。
「かおちゃん」の愛称で親しまれ、演技直前のリラックス法は氷上で指をポキポキと鳴らすこと。いつも笑顔の愛されキャラも、シーズン序盤はどん底だった。
「初めの2試合は、前のショート(SP)に変えたいぐらい嫌やった…」
今季初戦の出来を踏まえ、2戦目からベートーベンの「月光」にプログラムを変更。振付師もフランス人のリショー氏が新たに担当し「3本くらいへっちゃらだ」と、基礎点が1・1倍になる演技後半にジャンプ3つを組み込んだ。だが、変更2戦目のUSインターナショナルでは56・82点に沈み、フリーも振るわず涙を流してホテルに帰った。
翌朝の起床は4時で、眠れないまま帰路に就いた。サンフランシスコからの11時間5分のフライトも無の境地。降り立った成田空港で、日本連盟の小林フィギュア強化部長と「次、頑張ろうね」と握手し、「練習しまくります」と約束した。口呼吸を直すところまで気を配り、今季9戦目の体力は無尽蔵だった。他を寄せ付けない40・93点の技術点が地道な努力を示した。
2日後のフリーへ、中野コーチは「計算も、作戦も、うちには何もありません。一生懸命やるだけです」と笑った。努力の集大成で五輪をつかむ。【松本航】
<坂本花織(さかもと・かおり)アラカルト>
◆生まれ 2000年(平12)4月9日、神戸市生まれ
◆所属 シスメックス(神戸野田高2年)
◆フィギュア歴 4歳で始め、中野園子、グレアム充子両コーチに師事
◆主な実績 16年全日本ジュニア選手権優勝、17年GPシリーズ第6戦スケートアメリカ2位
◆武器 スピードを生かした高いジャンプ
◆自己ベスト(国際スケート連盟公認) SP69・40点、フリー141・19点、合計210・59点(17年GPスケートアメリカ)
◆特技 水泳、折り紙
◆愛称 かおちゃん
◆血液型 B型
◆身長 158センチ