明大が復活の、のろしをあげた。関東リーグ戦優勝の大東大と対戦した対抗戦2位の明大は、前半こそ7-14とリードを許したものの後半5トライを奪って大逆転。43-21で、19年ぶりの決勝進出を果たした。対抗戦1位の帝京大は、リーグ戦2位の東海大に31-12と快勝。明大は21年ぶり13回目の優勝をかけ、帝京大は9連覇を目指して7日、決勝で激突する。

 「前へ!」。明大の紫紺のジャージーが、足が止まった大東大のモスグリーンを切り裂いた。後半31分、CTB梶村がパスをインターセプト。フォローしたWTB山村は、相手2人を巧みなステップで抜き去り、楽々とトライした。「後半は相手も疲れるし、走り勝てると思った」。2トライの山村は胸を張った。

 強い明治だった。前半こそ7-14。自慢のスクラムで反則を連発し、ミスも目立った。しかし、後半は一変。FWが豪快な縦突進を繰り返し、BKも縦横に走り回った。21分に梶村のキックチャージからのトライで突き放すと、その後も次々と得点を重ねた。

 最後の大学日本一は、96年度。21年前だ。この直前、67年間チームを率いた北島忠治監督が、95歳で亡くなった。柱を失った明大ラグビーは迷走する。直後の2年こそ準優勝したが、その後は決勝にも進めず。出場さえ逃す年もあった。だからこそ、部の栄光を知る丹羽政彦監督(49)は「1つ上に行けたことは、意味がある」と感慨深く言った。

 メンバー表にずらりと並ぶ強豪高の名、東福岡、桐蔭学園、報徳学園…。タレントぞろいのチームが勝てなかった。才能の無駄遣いが続いた。変えたのは、今春、就任した田中澄憲ヘッドコーチ(HC、42)だ。強豪サントリーでチームディレクターを務めた同HCは「NEW MEIJI」をスローガンに掲げ、選手の意識を勝利に向けた。

 ロックの古川主将は「4年生全員の思いが1つになった」。SO堀米は「4月から1月7日(決勝)のためにやってきた。シーズン中も練習の強度を下げなかった」と話した。食事や掃除など私生活から、練習への取り組みまで見直し、生まれ変わった明大。丹羽監督は「今の明治の歴史は先人のもの。今度は92人の部員が作らないと」と帝京大戦に向けて言った。完全復活まであと1勝。明大フィフティーンが、新しい歴史をつくる。【荻島弘一】