昨年まで8連覇してきた帝京大にあって、20年間優勝から遠ざかる明大になかったもの。それが「ウイニング・カルチャー(勝つための文化)」だ。明大の健闘は光った。しかし「勝ち方」を知らなかった。それが1点の「差」になった。

 前半7分、明大CTB梶村がインターセプトから先制トライを決めた。素晴らしいプレーだが、もっと中央にトライすべきで、できる場面だった。直前のPGを外したSO堀米に楽に狙えるゴールを蹴らせるべきだった。仮にここで2点入り、堀米がキックの当たりを取り戻せば、試合展開は変わったかもしれない。

 後から考えれば簡単なことだが、試合中に判断できるかはトップレベルの試合経験による。「たら」「れば」の蓄積で知っていく。帝京大なら確実に中央にトライしたはず。「勝ち方」を知るから、王者なのだ。

 勝つための文化は、経験でしか伝承できない。帝京大は長く優勝を続けて「伝統」になっている。かつての強豪、早慶明など伝統校には今は「伝統」がない。明大はそれを自覚したから、新しい「伝統」作りに1歩が踏み出せたのだろう。(日刊スポーツ評論家)