カヌー禁止薬物混入問題を受け、日本連盟の春園長公常務理事は10日、加害者の鈴木康大(32=福島県協会)を事実上の永久追放にするとの見通しを明かした。鈴木は弁護士を通じて自筆の謝罪文を報道各社に送り、被害者の小松正治(25=愛媛県協会)は合宿先の石川県で心境を吐露した。薬物混入問題に付随して発覚した鈴木による窃盗問題の被害者は小松も含めて5人に上り、そのうち4人とは示談が成立していることも明らかになった。

 被害者の小松はこの日、日本代表の合宿先である石川県小松市内で取材に応じ「まさか日本でこういうことがあるとは思わなかった」と終始硬い表情で語った。鈴木について「やってしまったことが重大なので仕方ない。今は反省をしてほしい」と話した。その上で「自白してくれなかったら資格停止処分のままだった。そこに関しては感謝したい」と付け加えた。

 日本アンチ・ドーピング機構(JADA)に、1度は暫定的な資格停止処分を科された時は「東京はもう無理だ、という絶望感があった」という。この事実を真っ先に鈴木に伝えると「取りあえず日本カヌー連盟に相談したら」と返答されたという。鈴木とは親しかっただけにショックは大きい。「鈴木選手が自白してくれるまでは、精神的につらかった。直接本人の気持ちを聞きたい。何となく飲み物の味が違うことがあった」とも話した。

 宮城県出身の小松は昨年のスプリント日本選手権で男子カヤックシングルを制し、14年の仁川アジア大会(韓国)にも出場した。すでに暫定的な資格停止処分は解除されており、再発防止について「海外では自分の飲み物に注意していたが、これからは日本でも注意したい」と考えを語った。