ラグビーのトップリーグに所属する神戸製鋼で今季から総監督に就任したウェイン・スミス氏(60)が9日、初めて練習を指揮した。

ニュージーランド代表「オールブラックス(AB)」のアシスタントコーチとしてW杯2連覇に導いた世界的指導者は、この日の神戸市内での始動から積極的に「AB色」を出した。

 練習中のミーティングでは大型テレビで試合映像を見せながら、自らボールを持って実技指導。昨季の神戸製鋼の試合は全て見てきたといい「ABは過去2回のW杯で優勝した。世界中がABのラグビースタイルを継承している。15人全員が常にかかわるプレー、エキサイティングなラグビーをしたい」とABのような継続ラグビーを掲げた。

 スミス総監督とともに新ヘッドコーチ(HC)に就任したデーブ・ディロン氏(42)も同じくニュージーランド出身で、昨季までNECのアシスタントコーチを務めた。7月上旬にはABで116キャップを持つ世界的SOダン・カーター(36)も合流予定。チーム関係者によるとカーターが日本行きを決断したのも、同総監督の存在が大きかったという。

 福本正幸チームディレクターは「(スミス総監督は)平尾(誠二)さんとも親交があって、(平尾さんが16年10月に)亡くなってチームが大変なことを危惧してくれていた。『自分が力になれるなら』と言ってくれた」と昨夏のやりとりを振り返った。

 改革の第1弾は神戸製鋼史上初の共同主将制の導入。昨季から主将のフランカー前川鐘平(29)に元ABのSHアンドリュー・エリス(34)が加わる。前川は「ABのラグビーは見ていて楽しい。そういうラグビーができたら」と意気込み、エリスも「ウェイン(スミス総監督)は昔からよく知っている。自分にとって世界で一番のコーチ」と信頼の厚さをにじませた。

 かつて日本選手権7連覇を果たした強豪も、トップリーグでは03-04年シーズンの優勝が最後。15季ぶりのリーグ制覇へ、2年契約のスミス総監督は「考え方、アイデンティティー、(選手それぞれが)楽しむことを共有すれば、間違いなく勝ち続ける」と力強く言い切った。