エース乾友紀子(27=井村ASク)が、出場7種目すべてに優勝した。最終日はフリーコンビネーション、ソロFR、中牧佳南(25)とのデュエットFRと3種目を制覇。4日間で7種目、予選も含めて合計9度の演技をこなしての完勝だった。今年の大目標である夏のジャカルタ・アジア大会でライバル中国に追いつき、追い越すために全力でチャレンジする。

 タフに泳ぎ切った。最終日の3種目目。中牧とのデュエットでキレある演技を披露。「新しい演技が多いので不安もあったが、頭を切りかえてできた」。9度の演技で高いレベルをキープ。井村ヘッドコーチ(HC)も「乾なしでは戦えないのが今の日本」。23歳だった14年に「もうできない」と泣いたこともあるが、井村HCは「彼女は成長した。4年前に泣いたことが懐かしい」と目を細めた。

 昨夏の世界選手権後、脂肪分を3キロ落とし、さらに動ける体を作った。それと同時に「体操ニッポン」のストレッチ方法を導入。直線的な動きが魅力だが、関節の可動域を広げた。中国雑技団やロシアのシルク・ドゥ・ソレイユを見て、柔らかさを研究。井村HCが「水面にへばりつくような」という動きを手にした。

 エースは存在感を増しているが、乾頼みではチームの進歩はない。井村HCは前夜のミーティングで「乾が引っ張るだけではダメ。五輪や世界選手権に出た選手が働きをしてない。とんでもないこと!」と既存メンバーの奮起を促した。その上でジャカルタ・アジア大会へ「中国に対してはチャレンジャー。失う物はない。もう失ってますから。行くだけです」と勝負の夏を見据えた。【益田一弘】