日本テニス界のエース錦織圭(26=日清食品)が参戦する楽天ジャパンオープン(10月1日~7日、東京・武蔵野の森総合スポーツプラザ)で、世界初のスポーツ観戦テクノロジーが導入されている。

主催する日本テニス協会は2日、同大会において株式会社DeportarePartners(代表取締役社長・為末大)と協業し、男子プロテニス協会(ATP)とスペインのデータ提供会社Foxtennと連携し、従来にない試合分析サービスを実施すると発表した。

大会公式サイト(https://www.rakutenopen.com/)において、従来の選手情報やリアルタイムスタッツによるデータ配信に加え、試合終了直後にはデータを集計し、ゲーム解析まで行う。各選手の過去の試合との比較がなされ、調子はどうだったか、試合がどこで動いたのか、すべてが可視化される。

1秒間に3000枚連写できる超高速カメラを武器に、ファンが求める「ゲームの真実」に迫るという画期的な取り組みといえる。大会のトーナメントディレクターを務める日本テニス協会の川廷尚弘氏に、新たなテクノロジーの導入について聞いた。

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-導入の経緯、狙いは

「最近でも、野球の球速がどうだとか(データが)はやっています。テニスでもどういう試合展開で、どういうスタッツになるのか、データで出せるはずだと思った。非常に価値があり、それは財産。テニスのおもしろさをいろんなアングルで知ってもらいたいと思って、チャレンジしました」

-フランスのメスの大会でfoxtennのシステムが導入されたと聞きましたが

「前週の深センの大会でも導入されていますが、判定システムだけの導入です。どちらもATP250で、今回は(格上となる)ATP500で初めての導入であり、(従来になく)何が新しいかというと、普通にホームページで一般のテニスファンが(試合解析の)データを見られるのが大きい」

-ここまでオープンにしたのは初めて

「そうです。数字とグラフィック化しているってところで見やすい」

-一方で選手にとってはウイークポイントの探り合いになりますが、選手にはメリット、デメリットどちらが大きいですか?

「ネガティブな面を隠さなきゃとなる人もいる。でもこの競技の技術やクオリティーをさらに上げていかなければいけないし、先を見ていかなきゃいけない。新たな次元の戦略とか、どんどん突き進めていくべきだと思う。もちろんすぐウイークポイントが分かるけど(弱点を)なくせばいいわけですから。それで上の展開をすればいい」

-見えなかったものが見えてしまう世界です

「そこはもう事実ですから。ありのままを数字でグラフィックで見せているのは大きいと思います。1秒に3000枚の写真を撮っているわけですから。それを数字で解析して、グラフィックにして。強烈なレベルだと思います」

-スポーツをデータから読み解く面白さがある

「それぞれ選手の特性があります。それを早くいろんなパターンで先読みができる。見ているお客さんも、結局は接戦だけど『実はこういうところで、こういう展開だから一方的なんだな』と分かる。どんどん見つけると、選手もおもしろいし、お客さんもおもしろい。モバイルを見ながら『なるほどね』。そういうおもしろさがある」

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ATPツアーで唯一、日本で開催される楽天ジャパンオープン。全国に440万人いると言われるテニスファンだが、今大会を会場で観戦できる人数は1日あたり7000人弱ほどだ。そういった点でも、今回のテクノロジー導入はコアなファンの要求に応えたものだろう。

2年後には東京オリンピック・パラリンピックを控え、スポーツを取り巻く環境が飛躍的に変わっている。【佐藤隆志】