女子でショートプログラム(SP)5位の紀平梨花(16=関大KFSC)がフリー1位の154・72点を記録し、今季世界2位の合計224・31点で日本勢初のGPデビュー戦優勝を飾った。トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を2本成功させ、第6戦フランス杯(23~25日、グルノーブル)でGPファイナル(12月、カナダ・バンクーバー)進出を目指す。

両拳を振り下ろし、紀平が過去最高の喜びを表現した。「一生残るであろう、自分の演技。あれだけ心からうれしい気持ちは初めてです」。SP1位のトゥクタミシェワ、2位の宮原らを残し、5位からトップに躍り出る。取材エリアでは「まだ信じられない」と素直な気持ちを示し、日本勢初のGPデビュー戦優勝が確定すると「これからももっと上を目指したい」とさらなる向上心がわき出た。

信じたのは自分の武器だった。前日9日のSPで転倒した3回転半。午前練習から踏み切るタイミングを調整し、16本中11本の成功で心を整えた。浜田コーチから「闘争心を持っていこう」と送り出され、開始から28秒後に跳び上がった。完璧な着氷に3回転トーループを付け、2本目の3回転半も3・09点の加点付きで成功。スピン3つとステップは全て最高のレベル4と申し分ない演技を「98点!」と評価し、「もう少し質のいいコンビネーション(連続ジャンプ)にしたい」と笑顔で付け加えた。

4年後の北京オリンピック(五輪)で世界と戦う志を、人一倍強く持つ。シニアの実力者が平昌(ピョンチャン)五輪へしのぎを削った昨冬、年齢制限で五輪出場資格を持たない15歳は大きな決断を下した。「フィギュアをするには、この環境が一番いいかな」。片っ端から高校の資料を取り寄せては熟考し、最後はネット高校の「N高」進学を選んだ。

朝、起きると向き合うのはパソコンやスマートフォン。移動中も活用して科目を履修し、緻密な計画で氷上や陸上の練習、ダンス、バレエに100%の力で向き合う。多くのスケート仲間が全日制の高校に通うが、紀平が選んだのは「スケートファースト」。神経質になる一面があるほど、動画での研究も欠かさない。

次戦で表彰台に立てば、無条件でGPファイナル進出が決まる。「『やってやる』という気持ちで、不安なくいきたい」。超新星の旅が始まった。【松本航】

◆紀平梨花(きひら・りか)2002年(平14)7月21日、兵庫・西宮市生まれ。4歳で競技を始め、15年全日本ノービス選手権で3回転5種7本を決め優勝。16年ジュニアGPスロベニア大会でトリプルアクセルを決め、女子で史上7人目の成功者となった。17年には全日本ジュニア選手権を初制覇。同年全日本選手権3位。154センチ。