女子ショートプログラム(SP)2位の紀平梨花(16=関大KFSC)がフリートップの138・28点を記録し、合計205・92点でGPデビュー戦の第4戦NHK杯(広島)から2連勝を飾った。1シーズンでのGP2勝(ファイナルを除く)は、日本女子で13年浅田真央以来5年ぶりの快挙で、シリーズ2戦上位6人のGPファイナル(12月6日開幕、バンクーバー)進出を決めた。SP首位の三原舞依(シスメックス)は2位、同4位の本田真凜(JAL)は6位となった。

4分間を滑り終えた紀平が、少し控えめに笑った。男子も含めて日本勢初だったGPデビュー戦の優勝スコアからは、合計18・39点のマイナス。それでも堂々の200点台だ。「実力が出せなかったのであの得点。1位を取れたことはうれしいけれど、ファイナルが本番だと思っている」。日本女子では浅田以来、5年ぶりのGP2勝を成し遂げても、次を見据える。

「どうしよう。脚に力が入らない」。好調だった朝の公式練習から一転、時差ぼけの影響でフリー直前の6分間練習は状態が急変していた。冒頭の大技トリプルアクセル(3回転半)で、着氷をこらえた瞬間に「自分の筋肉では精いっぱい」。SP5位から頂点へ駆け上がったNHK杯の勝因が2本の3回転半。その代名詞にこだわることなく、2本目を即座に2回転半-3回転トーループの連続ジャンプに変更して成功させた。冷静さを併せ持つ16歳を、浜田コーチも「底力がついてきた」と評価した。

ジュニア時代から練習や試合の反省点を携帯電話のメモ帳に書きとめてきた。今月上旬の西日本選手権でも、演技後に取材エリアへ進む前に入力済みで「本番前にメモしたことを思い出して、忘れずに頑張りたい」。シニア1年目の快進撃とは対照的に「冷静に判断できたのも経験から。積み重ねたものが、身に付いてきた」とさらりと言った。

全体の2位で進むGPファイナルには、平昌(ピョンチャン)オリンピック金メダルのザギトワ(ロシア)らも出場する。「コンディションを整えれば実力は出せる。SPもフリーも完璧な演技ができたらいい」。紀平が強くなるための引き出しが、また増えた。