能代工(秋田)が、昭和63年(1988年)に始まった伝統の地元大会を足がかりに、令和での名門復活を目指す。大会初日(3日)に洛南(京都)、福岡大大濠(福岡)に連敗して迎えた2日目は、昨年の高校総体王者・開志国際(新潟)に81-87と食らいついた。OBの小野秀二氏(61)が、2年間のアソシエイツコーチを経て4月から正式にヘッドコーチ(HC)就任。同校3年時に初の高校3冠を達成し、選手と指導者として日本代表でも活躍した能代のレジェンドのもと、再び頂点に向かって突き進む。

バスケットボールの町に、再び活気が戻ってきた。2メートル超えの留学生2人を擁する開志国際の前に、リバウンドやゴール下での競り合いに苦しみ、第4クオーター残り5分を切り62-82と20点差を付けられたが、そこから自慢のフルコートプレスが機能し、最後は6点差まで迫った。「昨日はミスから走られることが多かったけど、今日はよくやったと思います」と小野HCも納得の表情を見せた。そして「留学生とやる機会はあまりないので、体感できてよかった」と大会の存在価値を口にした。

17年6月、日本代表やBリーグなどでも指揮をとってきた名将は、地元からのラブコールによって初めて高校生の指導を引き受けた。「全国で、能代工が弱いと寂しいという声を聞いた。OBとして、能代の町がひとつになってまたトップを目指したいと思った」。当初は愛知学泉大のコーチとの掛け持ちだったが、昨年4月から実質指揮を執ることになった。トップレベルとのギャップは感じるが「できなくてがっくりすることもありますよ。でも純粋なんで教えがいがある。楽しいですよ」と笑う。

例年より多い24人もの1年生が入ってきた。この日も3P4本を決めた高橋裕心(1年)は福岡県の天拝中時代、九州選抜のポイントガードとして活躍した。九州の強豪校からの誘いを断り、能代にやってきた。「子どもの頃から優勝回数がすごいと思っていた。田臥(勇太=B1栃木)さんを尊敬しているんで能代工でやりたかった。小野HCの指導も的確でわかりやすいです」。チームの課題はたくさんある。小野HCは「もっともっとトランジション(攻守の切り替え)を速くしたいし、選手層も厚くしたい」と1歩1歩着実に、名門復活に向かって進んでいく。【野上伸悟】