【光州(韓国)=益田一弘】18歳の荒井祭里(まつり、JSS宝塚)が「東京五輪内定2号」を確実にした。

予選は11位、準決勝は312・45点で10位。12人で争う17日の決勝で棄権するなどの事態がない限り、五輪代表が決定する。国際水連は12位以内に出場枠を付与し、日本水連は枠を獲得した選手を代表に内定。練習拠点が同じ「内定1号」の寺内健(38)に続き、女子では第1号となった。親子3代の五輪を目指した金戸凜(15)は準決勝17位で敗退となった。

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祈った。最後の5本目をノースプラッシュで決めて、荒井がスコアを待った。「どれくらいの点か、わからなくて」。70・40点を見て決勝を確信。小走りで向かったコーチ席で馬淵コーチに抱きしめられ、寺内とタッチ。「五輪に内定してうれしい」と涙を浮かべた。

美しい入水が五輪への道を開いた。技の難易度は世界トップに劣るが、足をピタッと締める美しさがある。馬淵コーチは「(最強国の)中国選手に負けないものを持っている。(審判の評点)9点ダイブができる。最初は普通以下の子だった。コツコツと努力して。まさか五輪に出るまでとは」と成長に目を細めた。

心を奮い立たせてくれた人がいる。同じ所属の1歳上、板橋美波。女子で世界唯一の109C(前宙返り4回転半抱え型)を持つ板橋は3月に疲労骨折した左足を手術。今大会で荒井と金戸が内定すると、板橋はリオ五輪8位の得意種目に出られない。仲間であり、ライバルであり、一緒にディズニーランドで遊ぶ先輩のことが気になっていた。

6月下旬、中国・広州合宿。同部屋だった板橋に「大会が近づいて緊張する」とこぼすと、板橋にこう言われた。

「2人とも決まったら、私は個人は無理だからシンクロ(種目)で頑張る。とりあえず今できることを頑張るから。祭里もやれることをやって頑張って」。無念を押し隠した板橋の励ましに「めっちゃ頑張らないといけないな」。

「周囲に人が集まるように」という願いを込めて「祭里」と名づけられた。小1で「板で跳ねているのが楽しかった」と競技を始めた。東京五輪開催が決まった13年9月は12歳で「あ、やるんだ。見に行きたいな」と人ごとだった。そんな少女が寺内、板橋を見て「五輪に行きたい」と決意。今春から兵庫・武庫川女子大進学も、競技に専念するために半年間休学。東京切符を確実にした18歳は、17日の決勝に向けて「思い切った演技をして入賞を目指します」ととびきりの笑顔で言った。

◆荒井祭里(あらい・まつり)2001年(平13)1月18日、兵庫県生まれ。小1で競技を始める。甲子園学院高-武庫川女子大。17年世界選手権にシンクロ種目で出場。18年ジャカルタ・アジア大会で高飛び込み5位。家族は両親、姉、妹。好きな食べ物はすし。150センチ、39キロ。