【鄭州(中国)12日=三須一紀】2020年東京五輪選考レースで注目が集まった女子シングルスの代表争いがついに決着した。世界ランキング10位の石川佳純(26=全農)が世界選手権女王で同3位の劉詩■(中国)と対戦。随所に粘りを見せたが、0-4で敗戦した。しかし直後の試合で、平野美宇(19=日本生命)も同18位の王芸迪(中国)に敗れたため、石川が同ランキングポイントで135点上回り、僅差で3大会連続の同種目代表を確実にした。平野は16年リオデジャネイロ五輪に続いて、同種目の代表権を逃した。

石川は、必死で涙をこらえた。0-4で敗れた試合後。「1年間戦って、たくさん試合も出てきて、やっと思ったなという感じです」。そこまでいうと、涙がこぼれた。それでも26歳は震える声で続けた。「後悔のないように戦おうと思って、それはある程度できた。1年間すごく鍛えられた」と言葉を絞り出した。

悔やんだのは0-1で迎えた2ゲーム目だった。4-8から巻き返してデュース。11-10、12-11と2度のゲームポイントを迎えた。しかし世界女王の壁を崩せない。3連続失点で12-14。「2ゲーム目をとりたかった。世界王者で強いので何も失うものはなかったが、2ゲーム目をとりたかった」と悔やんだ。

「24時間、忘れる事なんてない」。一生に1度の自国開催という価値と重みに、この1年間、苦しみ続けてきた。入浴中も、食事中も、東京五輪のことが脳裏にこびりついて、離れなかった。

五輪選考レース後半「忘れ物を取り返しに行きたい」とこぼしたことがある。16年リオデジャネイロ五輪の女子シングルス。当時、世界ランキング6位だった石川は北朝鮮の同50位選手にまさかの初戦負けを喫した。右足を痛めるアクシデントがあった。

「五輪でした思いは五輪でしか返せない。シングルスはすごく悔しい思いが残っている。シングルスに出場してリベンジしたい」。

12年ロンドン、16年リオで経験したが3度目となる東京の選考レースが最も苦しかった。10月、自身で「トンネルのようだった」と表すように、心が折れかけた。母久美さんは振り返る。「普段の自分に戻した方がいいと口では言っても、なかなか難しかった」。

自分で吹っ切れるしかなかった。北米OP出発前、18歳以来という「黒髪」で原点回帰。「リオもロンドンも苦しい1年があったから本番で悔いのないプレーができた。重圧を耐えたもの全部を出さないと損。『ここでやらないともったいないわ』という気持ちで毎回、五輪に挑んだ」と、必要不可欠な経験なんだと言い聞かせた。

続く試合で平野が敗れたために、石川は代表を確実にした。苦難の末につかんだ3度目の五輪切符。過去2度は届かなかった個人でのメダルを目指して、もっと強くなる。

※■は雨カンムリに文の旧字体