2連覇を目指す神戸製鋼が50-16で昨季12位のキヤノンを圧倒し、白星発進した。19年W杯日本大会で出場機会がなかった新加入のアタアタ・モエアキオラ(23)が、CTBで途中出場して初トライ。

チームは計7トライで、3トライ差以上のボーナスポイント(BP)も獲得した。次節は18日、静岡・ヤマハスタジアムでヤマハ発動機戦。勝ち点5で深めた自信を胸に、挑戦者をのみ込んでいく。

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185センチ、108キロ。名門神戸製鋼のジャージーに身を包み、モエアキオラがギアを上げた。20点リードの後半22分、敵陣10メートルライン付近で相手防御の隙間に走り込み、FB山中のパスを捕球。一気に40メートルを走りきった。2分前に途中出場し、これが1プレー目。名刺代わりのリーグ初トライを、少し控えめに喜んだ。

「とりあえずボールを前に持っていきたかった。うれしいです。スペースを見つけて、うまく使えた」

この日の開幕戦は2万3004人の大観衆。同じ会場で5430人だった昨季開幕戦(18年8月31日、NTTコミュニケーションズ戦)の約4倍だった。前半途中には「迷子のお知らせがあります。ラグビーボールをお持ちのお子さまが…」とアナウンスがある盛況ぶり。23歳の新戦力もベンチで見つめ「たくさん見に来てくれてうれしかった」と出番を待ちわびていた。

トンガから15歳で来日し、東京・目黒学院高で頭角を現した。東海大では外国人初の主将を務め、日本語での日常会話も問題ない。大学を卒業した昨春は南半球最高峰リーグ「スーパーラグビー」のチーフス(ニュージーランド)で活躍し、W杯日本代表に選出された。だが、史上初の8強は複雑な心境だった。「全然試合に出られなくて、試合をしたい気持ちがたくさんあった」。悔しさをぶつけたトライを、ディロン・ヘッドコーチは「アタアタにとって、忘れることはないだろう。これからのプレーが楽しみだ」とたたえた。

元ニュージーランド代表の世界的SOカーターは「私の足は古くなっているけれど…」の自己評価と対照的に18得点。W杯を経験した山中は「選手は一生懸命頑張って、見ている人が楽しく、面白いラグビーを見せたい」と力を込める。新戦力が融合した王者は、主役を譲らない。【松本航】