瀬戸大也(25=ANA)が「世界記録で金メダル」を視野に入れた。決勝で4分6秒09を出して圧勝。自己ベストを1秒86も更新して、萩野公介の日本記録で16年リオデジャネイロオリンピック(五輪)優勝タイムまで0秒04差に迫った。

これまでチェイス・ケイリッシュ(米国)と萩野に自己記録で約2秒の差があったが、一気に解消。同種目で堂々の金候補となって、フェルプス(米国)の世界記録4分3秒84更新も目標に掲げた。

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前半の200メートルを折り返して、会場がざわついた。瀬戸が日本記録を0秒05上回る。ラスト50メートルでも日本記録を0秒29リードし、大声援の中で優勝。だがわずか0秒04届かず。瀬戸は「タッチして会場の『あー』という声が聞こえた。ん? と思ったら100分の4秒足りない」と苦笑いした。

刺激的なタイムだ。瀬戸の自己記録は4分7秒95だった。昨夏世界選手権は優勝も4分8秒95で「タイムは満足できない」。ライバルの自己ベストはケイリッシュが4分5秒90、萩野が4分6秒05。16年リオ五輪から3人が争ってきた。自己記録に劣る瀬戸は勝負強さで対抗してきたが「やっと2人に持ちタイムで追いつくところまで来た」。日本代表の平井ヘッドコーチは「世界のライバルは『どうなってるんだ』と思うだろう。ボディーブローじゃなくて、KOパンチに近いんじゃないか」と評した。

伸びしろはまだまだある。冬場で調整なし、しかも今大会は風邪気味だった。「アップでも病み上がりの感じがあった」。得意のバタフライは抑え気味。しかも18日の200メートルバタフライ日本記録に続く2週連続のレース。「(梅原)コーチもびっくりしていると思う。泳ぐ前も4分7秒ぐらいは出せる実力はあると思っていた」と胸を張った。世界選手権後も高地合宿を行って地力アップに努めた。昨年12月には短水路(25メートルプール)で400メートル個人メドレーの世界記録を樹立。着実に力をつけてきた。

自己ベストの大幅更新で、新しい目標も視野に入れた。「怪物」フェルプスが高速水着で出した世界記録4分3秒84だ。「今日のタイムを必ず更新する自信がある。ドンピシャの泳ぎをすれば、4分4秒台。この半年でギアを上げれば、世界記録も出せなくはない。五輪で世界記録を目指していけば、簡単に金がとれる」。五輪イヤーに入って好記録を連発する瀬戸が「世界記録で金メダル」という、これ以上ない目標を視野に入れた。【益田一弘】