<テニス:全米オープン>◇12日(日本時間13日)◇ニューヨーク◇女子シングルス決勝

たった1つのポイントが流れを劇的に変えた。第2セット第3ゲーム、アザレンカの40-30。大坂はワイドへのサービスをバックのクロスでリターン。バックのストレートでオープンコートを狙われたが、素早いステップからフォアのストレートで切り返した。クロスを予想したアザレンカは体勢を崩して返球できない。ジュースに追いつき、そのまま一気にブレークバックに成功した。

それまではフォア、バックのクロスをストレートで返球されて左右に揺さぶられ、ショットを乱されていた。だが、このポイントを境にラリーの中でストレートを効果的に織り交ぜ始め、安定感を取り戻した。

第1セットを1-6で失い、この場面でもクロスを打っていたら第2セットも0-3となり、勝負は決していただろう。好調のアザレンカは大坂のプレーを読み、強打封じに成功していた。そのプログラムを断崖絶壁で崩し、勝利への光を見いだした。第1サーブにスライス系を使うようになったのも効果的で、その後は逆に大坂のワンサイドになった。

めったに見られない逆転劇。学生を指導する私にとっても最高の教材になった。絶望的な展開の中でも必ず気づきはある。ゲームの中でかけがえのない何かを見つけ、それを生かせば活路が開けることを大坂が教えてくれた。(亜大教授、テニス部総監督)