高木美帆(26=日体大職)が前人未到の5冠を達成した。まずは世界記録を持つ1500メートルで国内最高記録とリンク記録を更新する1分54秒08で圧勝すると、5000メートルでも7分7秒33。10年1月に穂積雅子がマークしたリンク記録を11シーズンぶりに0秒23塗り替える貫禄勝ちだった。初日の28日に500メートルと3000メートル、前日29日に1000メートルを制しており、3日間全5種目で完全制覇した。

   ◇   ◇   ◇

高木美は22年北京オリンピック(五輪)金メダルを見据えたレースをした。5冠は圧巻の一言で、国内レベルでは計れない力がある。5種目を通じて、力の出力やリズムは変わるが、全体的なスケーティングが変わらないのが強さの秘訣(ひけつ)だ。初日の500メートルで全20選手のうち唯一37秒台で優勝したことも、その後のよい準備につながった。

円熟期の26歳となり、心の成長を感じる。コロナ禍で自分自身や競技と向き合う時間が増え、より集中力が高まり、狙ったレースで確実に記録を出せるようになった。今季は出場した国内4大会で、出た種目は全て優勝。10代の頃から世界の大舞台を経験し、ベテランの域でナショナルチーム内でのリーダーとしての自覚も出てきた。おとこ気ある性格でもあり「私が日本代表を引っ張る」という強い責任感も垣間見られる。

北京五輪で目標達成するには、ここからさらに進化する必要があるが、5000メートルを除いて団体追い抜きを含めたら5個のメダル獲得の可能性もある。(88年カルガリー、92年アルベールビル、94年リレハンメル、98年長野五輪代表。日体大教授)