クボタ(レッドカンファレンス3位)が前回王者の神戸製鋼(ホワイトカンファレンス2位)を下し、初の4強入りを決めた。

2日前のメンバー発表で先発だったSH井上大介(31)が体調不良(新型コロナウイルスPCR検査の結果は陰性)で欠場。メンバー外から今季初先発を飾ったSH谷口和洋(26)が、冷静な判断と仕掛けで貢献した。

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次々と訪れる試練をクボタが全員で乗り越えた。大黒柱のSH井上が欠場となり、フラン・ルディケ・ヘッドコーチ(HC、53)が抜てきしたのは谷口だった。試合2日前時点で控えだったSH岡田一平(26)の“昇格”ではなく、選んだのは谷口との入れ替え。ルディケHCは「プランに谷口がしっくりときた。セレクションで手を挙げきってくれていた。今日のパフォーマンスは素晴らしかった」と頼もしそうに言った。

入団4季目の谷口は昨季出場なし。今季も控えとして、出場2試合にとどまっていた。天理大の先輩である井上からは入れ替え決定時、さらにはホテルから試合会場へ向かうバスの中で、激励のメッセージを受け取った。谷口は「最初は緊張もしたけれど、メンバー、バックアップの人、スタッフがメンタルのフォローをしてくれた。気が楽になった」。重圧が和らいだ。

前半キックオフで相手がペナルティー。敵陣に攻め込み、開始3分でNO8バツベイ・シオネ(38)が先制トライを挙げた。同9分にはWTBタウモハパイ・ホネティ(28)がトライ。だが、17-0と主導権を握った前半29分に思わぬ落とし穴があった。

相手NO8ナエアタの突進を止めに入った、19年W杯オーストラリア代表SOバーナード・フォーリー(31)が危険なタックルで一発退場。そこから14人対15人の戦いを強いられた。

冷静な状況判断で攻撃を組み立てていた谷口にとっては、相棒となるフォーリーを失った。「14人になったけれど、僕1人じゃなくて、全員やるべきことを話し合って、プレーを選択できた。ハルさんともコミュニケーションを取れて、ハードワークができた」。急きょ司令塔の役割を果たしたのも天理大の先輩。「ハルさん」と慕われる、15年W杯日本代表CTB立川理道主将(31)と共闘した。

後半は一時逆転を許し、簡単には勝たせてもらえなかった。それでも1点を追う後半36分、日本代表候補のWTBゲラード・ファンデンヒーファー(32)が逆転PGを成功。2点リードを守りきると、ノーサイドの笛で歓喜の瞬間が訪れた。立川は「10番のキーマン(フォーリー)がいないのは大きかったけれど、僕が代わりに入って、FWがよく頑張ってくれた。FWの努力のおかげ」と仲間をねぎらい「彼は大学の後輩。急きょ入って、チャンスでしっかりとパフォーマンスを出したのは、チームとして喜ばしいポイント」と谷口の健闘ぶりもたたえた。

次戦は16日、大阪・花園ラグビー場でサントリーとの準決勝に臨む。攻守で80分間、体を張った立川がチームの思いを代弁した。

「ここで終わりじゃない。まだまだ続く。しっかりと自分たちで勝利を勝ち取れる準備をして、サントリー戦に向かっていきたい」

勝利は、クボタの結束をさらに強めた。【松本航】