ラグビー日本代表は12日、過去最高の8強入りを果たした19年W杯日本大会以来601日ぶりの実戦となる、強化試合サンウルブズ戦(静岡・エコパスタジアム、午後3時35分キックオフ)に臨む。試合前の両チーム首脳陣、選手のコメントを基に、3つの注目ポイントをまとめた。

 

<1>置かれた立場の違い

新型コロナウイルスの影響で約1年8カ月の実戦ブランクがあり、サンウルブズ戦1試合の調整で26日の全英&アイルランド代表ライオンズ戦(スコットランド)に向かう日本代表。プロップ稲垣啓太(31=パナソニック)は「楽しみっていう部分はない。サンウルブズの立場と日本代表の立場では、かかってくるプレッシャーが違う。我々はプレッシャーを受け入れて、跳ね返すだけの準備をしてきた」と冷静に分析した。

試合前日の最終調整も対照的だった。緊張感漂う日本代表に対し、サンウルブズはウオーミングアップで時に笑いも生まれるなど、リラックスモード。サンルウブズのフランカー、エドワード・カーク主将(29=キヤノン)は「一番大事なのは、この試合を楽しむことだと思います」と試合に向けた心境を明かした。

 

<2>ゲーム展開

日本代表は5月下旬の大分・別府合宿からチーム作りを本格化させた。先発15人中13人が19年W杯メンバーで、ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(51、HC)は「多少変更している部分はあるが、チームとして、プレーするスタイルは基本的に変わらない」と前回W杯前に築き上げてきた土台を継承していく。

欧州遠征を念頭に、同HCはサンウルブズ戦で3つの課題を求めていく。

「1つ目は試合の入りの部分。冷静さをコントロールしないといけない。2つ目はフィジカルの部分。ボールキャリーなどを試す。(これまでの)トップリーグ(TL)のフィジカルレベルと明らかに違う。3つ目は自分たちのミスをなくす。サンウルブズはたくさん(ボールを)回してくる。いろいろなことをしてくるチームに対して、しっかりと戦い、パンチを繰り出したい」

ジョセフHCの想定通り、サンウルブズは選手の個性を生かした攻撃主体で臨む。試合6日前の6日に始動し、8日夜から合流した日本代表9人と短時間で作り上げたチーム。沢木敬介コーチングコーディネーター(46=キヤノン監督)は、はっきりと言い切った。

「ディフェンスは、ほとんどやっていない。(試合前日の)キャプテンズランで、スローで5分ぐらいだけしかしてません。ある程度の決まり事があれば、選手たちのハードワークでカバーできると思う。殴り合いになるかもしれないけれど、トライを取りにいく、アタックするという姿勢が選手1人1人に強い。細かいミスは出ると思うが、みんなエネルギーあふれるプレーをしてくれると思う」

日本代表ジョセフHCもポイントに挙げた「試合の入り」。サンウルブズの先発CTB梶村祐介(25=サントリー)は「守り勝つんじゃなく、攻め勝つのを意識している。先にスコアをとって、ジャパンをパニックにさせて、自分たちのペースに持ち込みたい」と青写真を描く。試合序盤の攻防が両チームの鍵になる。

 

<3>個人のアピール

日本代表は早大4年時の日本一に貢献した社会人2年目のSH斎藤直人(23=サントリー)、1月の全国大学選手権で天理大を優勝に導いたCTBシオサイア・フィフィタ(22=近鉄)などが控えに名を連ねた。19年W杯のエース福岡堅樹(28)が現役引退で去った左WTBには、初選出の南アフリカ出身ゲラード・ファンデンヒーファー(31=クボタ)を起用。ジョセフHCは「松島(幸太朗)は英国で合流するが、今回は彼(ファンデンヒーファー)にチャンスを与える。堅樹を失ったのは大きいが、違うタイプの選手」と192センチ、102キロの新戦力に期待を込める。

サンウルブズで出場する日本代表9人は代表内での番手争い、その他のメンバーは将来的な代表入りへのアピールの場となる。

今季、サントリーのTL準優勝に主力で貢献したCTB中村亮土(30)は日本代表で先発。一方、サンウルブズで対面となるのは、中村から定位置を奪いきれなかった25歳の梶村となる。梶村は「彼(中村)に12番を取られたシーズン。試合に出られたらやれる(活躍できる)と思っていたけれど、出られなかった。楽しみですね」と闘志を燃やしている。

代表のジョセフHCは「9月にはまた合宿を再開する。そこの中には今回サンウルブズの選手たちが、入ってくる可能性も大いにあり得る」とし、秋の代表活動も見据えている。【松本航】

 

【日本代表】

<1>稲垣啓太(パナソニック)

<2>坂手淳史(パナソニック)

<3>バル・アサエリ愛(パナソニック)

<4>ビンピー・ファンデルバルト(NTTドコモ)

<5>ジェームス・ムーア(サニックス)

<6>リーチ・マイケル(東芝)

<7>小沢直輝(サントリー)

<8>アマナキ・レレイ・マフィ(キヤノン)

<9>茂野海人(トヨタ自動車)

<10>田村優(キヤノン)

<11>ゲラード・ファンデンヒーファー(クボタ)

<12>中村亮土(サントリー)

<13>ラファエレ・ティモシー(神戸製鋼)

<14>レメキ・ロマノラバ(サニックス)

<15>山中亮平(神戸製鋼)

<16>堀越康介(サントリー)

<17>クレイグ・ミラー(パナソニック)

<18>垣永真之介(サントリー)

<19>ジャック・コーネルセン(パナソニック)

<20>テビタ・タタフ(サントリー)

<21>斎藤直人(サントリー)

<22>松田力也(パナソニック)

<23>シェーン・ゲイツ(NTTコミュニケーションズ)

<24>シオサイア・フィフィタ(近鉄)

※当初、背番号21でベンチ入り予定だったピーター・ラブスカフニ(クボタ)は試合前にコンディション不良での欠場を発表

 

【サンウルブズ】

<1>森川由起乙(サントリー)

<2>庭井祐輔(キヤノン)

<3>北川賢吾(クボタ)

<4>長谷川崚太(パナソニック)

<5>ヘル・ウベ(ヤマハ発動機)

<6>リアキ・モリ(日野)

<7>エドワード・カーク(キヤノン)

<8>ベン・ガンター(パナソニック)

<9>荒井康植(キヤノン)

<10>山沢拓也(パナソニック)

<11>尾崎晟也(サントリー)

<12>梶村祐介(サントリー)

<13>ディラン・ライリー(パナソニック)

<14>高橋汰地(トヨタ自動車)

<15>野口竜司(パナソニック)

<16>彦坂圭克(トヨタ自動車)

<17>三浦昌悟(トヨタ自動車)

<18>浅岡俊亮(トヨタ自動車)

<19>秋山大地(トヨタ自動車)

<20>布巻峻介(パナソニック)

<21>中嶋大希(NEC)

<22>前田土芽(NTTコミュニケーションズ)

<23>鹿尾貫太(ヤマハ発動機)

<24>竹山晃暉(パナソニック)