コベルコ神戸スティーラーズ(旧神戸製鋼)が開幕3戦目でリーグワン初勝利を挙げた。15日の大敗から、トンガ・ショック、阪神・淡路大震災「1・17」を経て、WTB山下楽平(29)の2本を含む4トライなどの攻撃、SOアーロン・クルーデン(33)のGKチャージなど守備がかみ合った。競り合いを5点差で制し、チーム復興の第1歩を踏み出した。

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神戸の執念がビッグプレーを呼んだ。後半33分にトライを許し、リードは8点。相手GKはゴール正面右20メートル弱…。SOクルーデンが走った。東京ベイのSOフォーリーが蹴った球に体を投げ出し、たたき落とした。決まっていれば、1トライ1ゴールでひっくり返る6点差だった。「クルーデンの判断。あれがなければ負けていたかも」とフランカー橋本大輝主将(34)。みんな、勝ちたかった。

横浜Eに21-55と大敗し、開幕2連敗となった15日。試合後、トンガの海底火山が噴火の報が飛び込んできた。チームにはプロップ中島イシレリ(32)WTBアタアタ・モエアキオラ(25)CTBアンダーソン・フレイザー(37)のトンガ出身者がいた。自軍だけではない。日本ラグビー界自体、トンガとの縁は深い。折しも、17日は27年前、阪神淡路大震災が発生した日だ。

「震災から復興して、というチームはあまりないです。それに2連敗して、トンガの仲間がいて」と橋本主将。「自分たちも絶対に復興、復活しよう。今は、本来の姿をこれから見せていくチャンス」と言うリーダーの言葉を、チームが胸に刻んだ1週間だった。

WTBモエアキオラは絶妙のキックで流れを変えた。自陣10メートル付近から、敵陣22メートルライン右奥へタッチを切った。新ルール「50:22キック」でマイボールラインアウトを獲得し、前半31分に12-5とするWTB山下楽のトライにつなげた。

前日21日午後、トンガの両親と電話が通じた。この日の試合前は会場で黙とうがあり、スタンドでトンガの旗が揺れた。「いろんな人がたくさんメッセージをくれた。家族と連絡がついて安心した。スタンドを見て、すごくうれしくて」と思いをプレーにぶつけた。

トップリーグを通じて初となる開幕3連敗を回避した。「今まで神戸らしい展開ラグビーができずに、受けていた。それを払拭(ふっしょく)できたと思う」。持ち前の嗅覚でステップを踏み、2トライを決めたWTB山下楽が言う。開幕3戦目の初勝利。神戸のリーグワンはこれからだ。