フィギュアスケート男子で18年平昌五輪(オリンピック)代表の田中刑事(27=国際学園)が11日、自身のツイッターで現役引退を発表した。今後はプロスケーターと、指導者を志すアシスタントコーチを並行していくという。

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フィギュア界でベテランともいえる27歳の田中は、良き兄貴分だった。男女問わず「刑事くん」と親しまれる。「刑事」の名前は父が「正義感の強い人に」という願いで名付けた。本人も「覚えられやすくて、結構得している」と笑った。

大学1年までジュニアに身を置いた。年下の後輩と競う立場になり、初の全日本ジュニア王者に輝いた13年は2位が3歳下の宇野昌磨だった。自身の弟と同い年だが「昌磨といる時間の方が長い」と苦笑いするほど、遠征で同部屋が続いた。そこでは「帰ってきてベッドにダイブしない~」と優しく諭し、消臭剤の使い方も教えた。一方、スケートについては「集中の仕方、考え方がすごすぎる」と年下からも貪欲に学んだ。

平昌五輪の翌19年には「みんな生き生きしている。そこに比べると結構『オジサン』になっちゃう。自分自身、頑張ってやろうと思っています」と現在地を自己分析した。エキシビションは年齢を感じさせない「ジョジョの奇妙な冒険」を選び、キレキレのステップを披露した。自らの可能性を決め付けず、目標を追い、他者には優しい選手だった。そうした姿があり、田中は愛された。【フィギュアスケート担当=松本航】