フィギュアスケート女子の18年グランプリ(GP)ファイナル女王、紀平梨花(19=トヨタ自動車)が8日、都内で近況を語った。

右距骨(足首)疲労骨折で今季は全戦欠場。2月の北京オリンピック(五輪)出場も逃した後、報道陣の取材に応じるのは初めてとなった。

右足首の状態について「去年の12月に発覚した、ひどい状態から比べれば感覚的にも(診断)画像的にも良くなってきている」と説明。「4回転ジャンプは跳んでいないですけど、トリプル(3回転)やコンビネーションは、ダメだと言われているのに跳んでいます」と笑顔で打ち明けた。

来季の目標については「まだ、どの試合から出るかは決まっていません。焦らず、全日本選手権にピークを合わせたい」とした。フリー曲は「タイタニック」を継続することを明らかにし「まだ試合には出していませんが、さらにブラッシュアップされています」とお披露目に自信を見せた。

昨年9月から、カナダ・トロントのクリケットクラブでブライアン・オーサー・コーチに師事していることに関しては「振り付けを手直ししてもらったり、ジャンプまでの流れを見ていただいたり、スケーティングがすごく磨かれているかなと。トレーシー(・ウィルソン)コーチにもステップを教えてもらっています」。最近もアイスショーなどの合間に2週間ほどの短期日程で2度、渡航したという。

夢だった北京五輪では、坂本花織(22=シスメックス)が団体と個人で銅メダルを獲得するなど、日本勢の活躍を見届ける側に回った。「素晴らしかった。友達としてうれしかったし、諦めなければチャンスはあると勇気をもらった。私もミラノと思えるようになりました」と26年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪へ吹っ切れた。

「けががあったことで、さらに強くなったと言ってもらえるようなシーズンにしていきたい」

この日は、ウイングスフォーライフ財団が脊髄損傷の治療方法発見に取り組む資金助成を目的に、全世界で一斉にスタートするチャリティーランを開催。紀平はレッドブル・アスリートの一員として、都内でのアプリラン・イベント神宮外苑にゲスト参加した。

まだ右足首が完治していないため「歩きます。参加することに意義があります」と、ほほ笑んだ。

「あまり焦ったり落ち込んだりすることがなくなって、すぐ自分を責めることもなくなって、やり過ぎずガッツリ休む大切さも知って、練習しないことの罪悪感を感じなくなりました」

北京五輪の氷に立てなかったショックは「最初はあったけど、五輪だけじゃないですから、スケート人生は。おかげで強くなれる、と前向きです」。19、20年に全日本選手権を2連覇したスケーターが強き女性に成長していた。【木下淳】