4大陸女王でショートプログラム(SP)首位の三原舞依(22)が、ハプニングにも動じず頂点に立った。

5つ目のジャンプを降りたところで突然、曲がストップ。そこから無音で後半の3連続ジャンプ、3回転ループを着氷させた。演技を中断後、最終盤のステップなどで加点を導き、フリートップの138・45点を記録。合計207・61点で2位の河辺愛菜(愛知・中京大中京高)に27・94点差をつけた。勝負の秋へ、今季初戦優勝で弾みをつけた。

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無音の会場にアンコールのような観客の手拍子が響いた。演技後半に入り、三原が5つ目のジャンプを決めた後のことだった。突然、今季の新フリー「恋は魔術師」の音楽が止まった。苦笑いを浮かべて、そのまま次のジャンプを跳んだ。

「流れを途切れさせたくなくて、ループまでやっちゃっていました」

音楽はない。それでも得点源となる3回転ルッツからの3連続、最後の3回転ループを決めきり、審判席に進んだ。ここで中断。コーチから音源のCDを受け取り、曲が流れると、ループの後から演技を再開した。最終盤のスピンとステップを最高のレベル4で締めくくった。突然の出来事にも動じない強さがあった。

「うちのクラブでは『ミス止め』(ジャンプを失敗をした時点で曲が止まる練習)があります。止まっちゃったていで、頭の中で曲をかけながらできました」

ルールでは音楽が止まった際、審判団へと申告することで中断し、減点なく再開することができた。三原も演技後は「止まった時点でレフェリーのところに行った方が良かったけれど…」と振り返ったが、普段の練習が思わぬ形で実った。

滋賀県連盟が限られた人数で運営する地方競技会。スタッフは事前に提出された全カテゴリーの数百に及ぶ音源を確認していたという。三原は同様の出来事を「試合では初めてか、記憶に残っていないか…」としつつ「いい経験ができました。『対応してくださってありがとうございます』という感じです」と笑った。

11月にはグランプリ(GP)シリーズ第4戦英国大会、最終戦フィンランド大会に出場する。「まだまだもっと、ああしたい、こうしたいがある」。優勝の副賞は近江牛1キロ。英気を養い、次に進む。【松本航】

◆げんさんサマーカップ 滋賀県スケート連盟主催の地方競技会。大津市で牛肉などを販売する元三フード株式会社がサポートし、各カテゴリー優勝者には近江牛と同社のゆるキャラ「げんちゃん」のぬいぐるみが贈られる。シーズンが本格化する秋に向けて、多くのトップ選手も現状の確認などを目的にエントリーする。