シニア1年目を迎えた大島光翔(19=明大)が「マーヴェリック」になりきった。

ショートプログラム(SP)4位から迎えたフリーのテーマは、映画「トップガン」。オフに映画館で見た「トップガン・マーヴェリック」に感動し、そのままプログラムに採用した。主演トム・クルーズが演じる「マーヴェリック」を意識した戦闘服に、敬礼ポーズのやり方までを細かく観察し、再現していった。

冒頭の4回転ルッツは見事な“テークオフ”からの“着陸”とはいかず、転倒にはなったが、「高さも良く、幅も良いものだったと思う。初速でしめるところが遅れて、回転不足での転倒になったかな」と振り返る姿に暗さはない。

「見どころは、4曲を使ってて、最初から最後まで良い部分を使ってます。格好いい部分、セクシーな部分、ミッション達成の達成感、感情の起伏を表現できれば」

ジャンプはプログラムの1つの要素にすぎない。むしろスタート前から始まる、細かい所作の連続こそがこだわり。

「フィギュアというスポーツは他のスポーツと違い、感情や思っているところを好きなように体現できるのが魅力。オフのアイスショーで、お客さんに喜んでもらう演技をしたいな、それがやりたいものだと実感したので、点数も大切ですが、それと同じくらい、お客さんに楽しんでもらうことも大事」

この日は無観客ながら、その信念は揺るがない。世界観を考え抜いて、フィニッシュポーズを終えた後、リンクから上がる際にも敬礼ポーズで締めた。得点は131・02点、合計201・73点の4位。

「氷の上で自分だけが1人滑ってて、自分の事だけ見てくださっている。曲が流れる前のコールから、次の人までは自分の時間。目が離せない時間を作りたい」

得点だけではくくれないこだわりを、これからもシニアの舞台で体現していく。【阿部健吾】