14年ソチ、18年平昌五輪2連覇王者で、今年7月にプロ転向した羽生結弦さん(27)が夢を現実にした。

極めて異例のワンマンでの初の単独アイスショーが初日を迎え、代名詞の「SEIMEI」や自己プロデュースの新曲「いつか終わる夢」など8曲を披露。トークに幼少期からの映像も織り交ぜた約90分間のショーに半生を込め、「フィギュアスケートの限界を超えていきたい」と新境地を切り開いた。

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新たな門出の1曲目は、やはり「SEIMEI」だった。2つ目の金メダルを手中に収めた18年平昌五輪のフリー曲を舞う…前に驚かせた。「ただいまから6分間練習を開始します」。公式戦と同じ、試合前の最終調整。ショーでは例をみない試みからスタートした。

たった1人のリンクで、試合さながらの緊迫感で心身を整えた。演技ではトリプルアクセル(3回転半)3連発。試合では認められない構成で「競技以上」を目指す演技の難易度を上げた。

7月19日のプロ転向会見から108日。「構想を練って、VTR、セットリストを考えて考えてきた。自分の中で妥協せず、新しい羽生結弦のショーの形を見守っていただけたら」。体力強化が1つの鍵で「1曲だけでも疲れ切ってしまう僕が(90分間の)通しを5回、やり切って今日を迎えられるまで強化してきた。演出も今朝までかかった」が、1人だからこその理想を、約7900人の観客へ示した。

中盤には、自身が全て振り付けした新曲「いつか終わる夢」を舞った。演出家のMIKIKOさんと初コラボ。好きなゲーム「ファイナルファンタジー10」のテーマ曲とプロジェクションマッピングに合わせ、「ファンの方が好きだと言ってくださる僕のクールダウンの動きを取り入れた」。場内リクエストで「レッツゴークレイジー」も躍った。

第一線から離れた後は「人生史上で初めて目標がない状態」となったが、もう吹っ切れた。「できることを目いっぱいやってフィギュアスケートの限界を超えていけるように」。異次元のワンマン公演でプロの第1歩を刻んだ。【木下淳】