男子W杯バレーが30日に東京・代々木第1体育館で幕を開ける。パリ五輪予選として開催される今大会。7月まで行われたネーションズリーグ(VNL)で銅メダルを獲得した日本代表(世界ランキング5位)は、開幕戦でフィンランド(同28位)と対する。女子代表が惜しくも逃した五輪本番前年の出場権獲得へ-。そのキーマンを「龍神の爪」と題して紹介する。
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パリ五輪切符獲得へ欠かせないピースが帰ってきた。左のエース、オポジット西田有志(23=パナソニック)。VNLでは、腰痛や同じポジションの宮浦健人の台頭もあり、途中交代やスタメン落ちを経験した。昨年の同大会でサービスエース数2位をマークした男が「これまでのバレー人生で経験がない」というスランプに陥っていた。
それでも気力は切らさなかった。「スポーツ選手なので、必ず成功するわけではない。自分の中でうまくいかない期間がずっと続いていただけ」と捉えた。そして迎えた8月のアジア選手権。持ち味のサーブと鋭いスパイクで優勝に貢献した。復調を印象づける活躍に「五輪予選へいい弾みになった」と目をぎらつかせた。
逆境にも動じない姿勢は、バスケ界のレジェンド、故コービー・ブライアント氏から学んだ。「ブライアント選手は、練習で何万本もシュートを打って成功を覚えれば、試合ではプレッシャーにならないと言っていた。結果を残す選手はそれぐらいしているんだなと。今の自分に最も当てはまるな、って」。競技は異なるが、幼い頃からのヒーロー。その言葉を胸に、好調時の状態を頭でイメージしながらひたすら反復練習し、復活への糸口とした。
周囲の環境も後押しした。「ここにいるみんなは、うまくなるために、強くなるために練習している。そんな環境で自分がやれるのはすごくうれしい」と感謝する。今季からは代表チームの副キャプテンという肩書も加わった。「(VNLでは)迷惑かけてしまった部分がある。今やっと吹っ切れた状態にあるので、勢いをもたらしたい」。コートの中心に返り咲いた西田は、誰にも止められない。【勝部晃多】