瀬戸大也(29=CHARIS)が、3大会連続五輪を決めた。男子200メートル個人メドレーを1分56秒87で制し、派遣標準記録(1分57秒51)を突破。五輪金メダルを目指した本命の400メートルではまさかの落選となったが、昨秋から拠点とするオーストラリアでもまれた“ハッピー野郎”がパリでのメダル獲得を誓った。女子200メートル個人メドレーは、21年東京五輪金メダルの大橋悠依(28=イトマン東進)が決勝進出。引退覚悟の大一番で内定を目指す。

パリへの挑戦権を確定させ、瀬戸は隣の後輩を思った。派遣標準記録までわずか0秒01。落ち込む20歳の小方の肩に手を回し「お疲れ」とねぎらった。5月で30歳。長く個人メドレーをけん引する男は、プールから出ると「本当に応援ありがとうございました」と頭を下げ、夏を見据えた。

「ここから自分が得意なゾーンに入っていく。夏は任せてほしいと思います」

大会2日目の18日。本命の400メートルで代表切符を逃した。2位に入りながら、派遣標準に0秒21届かず。五輪4カ月前の設定タイムの高さに「何なんだよ」と言いそうな気持ちを静め、切り替えた。200メートルバタフライも「直感で泳いだ方がいい」と決勝まで3本に出場。「ダメな時でもポジティブに。もっと“ハッピー野郎”になって戻ってきた」。昨秋から拠点のオーストラリアは屋外プールで、近くに海がある。名伯楽ボール・コーチは常に「元気か?」と声をかけてくる。開かれた環境は前向きな性格に拍車をかけた。

経験からくる冷静さは失っていない。決勝は後半の平泳ぎからギアを上げる予定で、前半は54秒76の2番手。自身の後ろにつけた小方、松下らの位置を確認し「54秒台で回っているかな?」と想定内で進めた。余力を使って平泳ぎで先頭に立ち、体が起きないように心がけた自由形で「これで56秒台にいっているだろう」と確信していた。

ターゲットは決まった。「自己ベストを出して、メダル獲得を目指したい。本番でも、結果が良くない人とも励まし合い、少しでもいい結果を出せるように裏で引っ張りたいと思います」。日本競泳陣に頼りになる男が加わった。【松本航】