【モントリオール(カナダ)=阿部健吾】ショートプログラム(SP)2位の鍵山優真(20=オリエンタルバイオ/中京大)の、逆転の初優勝はならなかった。大技4回転フリップを初めて決めるなどフリー203・20点の合計309・60点をマークし、キス・アンド・クライでガッツポーズした。しかし、直後のイリア・マリニン(19=米国)にフリー歴代世界最高227・79点の合計333・76点(世界2位)もの神演技が出た。

「ショート、フリーともに全力で滑りきることができた。結果は満足してる部分もあるけど悔しい思いが強い」と振り返った。

SPでは安定感あるノーミス演技で、首位の宇野昌磨(26=トヨタ自動車)と1・37点差の2位。「ここからが本当の勝負」とするフリーで高得点を記録し、憧れの宇野を上回った。しかし、米国にはクワッドアクセル(4回転半)や4回転ルッツを成功させた「4回転の神」がいた。

22年北京オリンピック(五輪)銀メダルの鍵山にとって、世界選手権も21年と22年は2位だっただけに、世界一へ懸ける思いは強かった。日本男子では高橋大輔、羽生結弦、宇野昌磨に続く日本男子4人目の王者を目指し、後半のトリプルアクセル(3回転半)以外はノーミスの美しい出来。父正和コーチが94年に6位だった世界選手権の頂点は父子の夢でもあったが、持ち越しとなった。

ただ、トリプルアクセル(3回転半)の転倒後に上がった歓声に「こんなに応援してもらえるんだって泣きそうになった」と話し「応援がなかったら気持ちが切れかけてしまっていたかもしれない。本当にありがたい」と感謝した。

自らの演技で、けがからの復活を示してきた。昨季は左足首の故障に苦しんだが、復帰シーズンとなる今季は、昨年12月のグランプリ(GP)ファイナルに初出場して銅メダル。2月の4大陸選手権では2位に30点以上の大差をつけ、五輪、世界選手権、GPファイナルを含めたシニアの主要国際大会で初優勝を収めていた。

世界選手権では過去2個の銀メダル。3回目の今回は「昨年1シーズン、けがで試合に出ていないので。気持ちとしては、ほぼ初めてのような新鮮な感覚」で臨んでいた。「自分の一番のライバルは自分」。宇野に対しても本紙インタビューに「憧れるのをやめましょう、の気持ち」と闘志をほとばしらせていた。その努力は色あせない。100%を追究する姿勢で世界2位には返り咲いた。

マリニンが初優勝、日本男子初の3連覇を目指した宇野昌磨(26=トヨタ自動車)は4位、三浦佳生(18=オリエンタルバイオ/目黒日大高)は8位だった。