宇都宮ブレックスが3シーズンぶりの地区優勝に王手をかけた。

第4クオーター(Q)残り15秒。遠藤祐亮が最後の力を振り絞り、アルバルク東京の司令塔・テーブス海を追い回す。78-76、その差わずか2点。逆転の3ポイント(P)を狙ったテーブスのシュートはリングの横を素通りし、勝負は実質決した。

「最後(4Q)のディフェンスはしびれませんでしたか? すごい集中力でした」

試合後のインタビューで、佐々宜央(さっさ・のりお)ヘッドコーチ(HC)は観客席に向かって叫んだ。優勝を争うチーム同士の激突は、互いのプライドがぶつかり合い「流れが行ったり来たり」(佐々HC)の大接戦。勝負を決めたのはやはり、ブレックス伝統の泥くさいディフェンスだった。

第4Q残り6分、大車輪の活躍をしていたD.Jニュービルの足がもつれ、相手にボールがわたる。速攻をしかけられたが、鵤誠司が素早く自陣に戻り、パスをカットして奪い返した。グラント・ジェレットは豪快なショットブロックで士気をあげ、竹内公輔はオフェンスリバウンドを取って相手に流れを渡さない。

「公輔に助けられた。規律高くプレーしてくれて、ゲームに安定感をもたらしてくれた」と佐々HC。エース比江島慎がファウルトラブルに見舞われると、渡邉裕規がプレータイムを伸ばしてカバー。「ベテランたちがポイントポイントで踏ん張ってくれた」と佐々HCは振り返った。

珍しいシーンもあった。第3Q、A東京の放ったショットクロックぎりぎりのシュートに対して、ヘッドコーチチャレンジを要求。2点取り消しに成功した。「アシスタントコーチにも聞いたら『間に合ってないんじゃないですか』と言ってくれた。あの2点はでかい」(佐々HC)。まさに「チーム一丸となった勝利」(ジェレット)だった。

攻撃では3Pを14本成功させた。昨年10月の2連戦では3Pを封じられた(7本と1本)が、第1Qの最初の試投で遠藤祐亮が決め、成功率5割以上流れをつくった。「いいスタートが切れた。全員で戦って勝ち切れた」と遠藤が言えば、佐々HCも「今年はこれ(3P多投)をやってきた。決めきれて良かった」とうなずいた。

A東京にはホームで5連敗中だったが、嫌な意識も振り払った。21日の第2戦に勝てば3シーズンぶりの地区優勝、チャンピオンシップ準決勝のホーム開催権もほぼ手中にする。

ただA東京は今季、この日も含めてアウェーでわずか3敗(24勝)しかしておらず、敵地での連敗はない。この日欠場したセバスチャン・サイズが戻れば、宇都宮にとっては初戦以上にタフなゲームになる。チーム最多の24得点をマークしたD.Jニュービルは、ブレックスファンに向けて「今日と同じエナジーを持ってきてください」と呼びかけていた。【沢田啓太郎】