闘病中の母に届けた五輪切符-。ローイング(旧ボート競技)のパリオリンピック(五輪)出場権を獲得した軽量級ダブルスカル女子の大石綾美(アイリスオーヤマ)広内映美(明治安田生命)組が22日に帰国し、成田空港で取材に応じた。

33歳の大石は3大会連続出場。東京オリンピック(五輪)後に進退について悩んだ時期もあった。競技を継続する決め手となったのは、がんと戦う母知子さんの存在だった。「母が生きる希望になりたい。私がスポーツで頑張る姿を見てもらうことで、『長生きしたい』と思ってくれれば」。そんな決意を胸にボートに乗り続けた。

パリ五輪を目指して競技に打ち込むことで、大好きな母を元気づけた。喜ぶ母の表情から、娘は逆にパワーをもらった。「私も1日1日を大切に過ごさなければと感じている。いまは本当に1日1日が濃く感じる。すごく幸せ」。6歳年下の広内とのコンビで臨んだアジア・オセアニア大陸予選(21日閉幕、韓国・忠州)で、ついにパリ行きの切符をつかんだ。

娘からの吉報に、初めて五輪出場を決めた8年前と同じように母は喜んでくれた。「頑張ったね。私もパリに行けるように頑張る」と言葉をかけてくれた。余命宣告を受けながらも、少しずつではあるが回復傾向にあるという。これからも2人で喜びを分かち合っていく。

大石は「パリ五輪でも初めてのような気持ちで、ワクワクしながら楽しみたい」と誓う。家族とともに、パリでも全力でオールをこぐ。【奥岡幹浩】