警視庁組織犯罪対策第5課は18日、大麻取締法違反(所持)の疑いでロシア出身の西前頭筆頭若ノ鵬寿則容疑者(20=間垣、本名・ガグロエフ・ソスラン・アレキサンドラビッチ)を逮捕した。容疑は路上に落とした若ノ鵬容疑者の財布が警察に届けられ、大麻が入っていたために発覚した。本人も容疑を認めているという。日本相撲協会は一両日中に臨時理事会を開く予定。2月には時津風部屋新弟子事件で幕下以下3力士が逮捕、後に起訴されているが、関取の逮捕は初めて。協会は若ノ鵬容疑者を解雇する可能性もある。

 調べによると、若ノ鵬容疑者は6月24日午後1時ごろ、東京・墨田区錦糸1丁目の路上周辺で、大麻成分を含む乾燥植物片0・368グラムが入ったロシア製たばこを1本所持した疑い。たばこの入った財布を落とし、通行人の女性が拾って交番に届けたところ、財布の中から若ノ鵬容疑者の外国人登録証を発見。たばこから大麻特有のにおいがしたため、鑑定したところ、大麻成分が含まれていることが分かったという。

 同課は、墨田区の間垣部屋と若ノ鵬容疑者の自宅マンションを家宅捜索。自宅で吸引具を押収して逮捕にいたった。本人は「六本木で外国人にもらった」と供述し、同課は常習的に大麻を吸っていた疑いもあるとみて調べている。

 若ノ鵬容疑者は05年春場所に初土俵で、順調に出世を重ねてきた。18歳5カ月での新十両は史上8位の年少記録。先の名古屋場所では前頭筆頭で4勝11敗。9日の夏巡業仙台場所で左足首を負傷し、同巡業を休場して帰京していた。

 大相撲史上初となる関取逮捕の一報に、日本相撲協会にも衝撃が走った。同容疑者の師匠、間垣親方(元横綱2代目若乃花)は5月、夏場所中に弟子に暴行を与えたとして3カ月30%の減俸処分を受けたばかり。同親方はこの日、故郷の青森県内に滞在。弟子が起こした前代未聞の不祥事を聞き、近い関係者には「とんでもないことになった」と話すなどショックに打ちひしがれているという。一方、協会で報道陣に対応した友綱理事(元関脇魁輝)は「一連の問題から立て直そうと、みんな一生懸命なのに危機感がない人がいた」と悔しそうに話した。

 北の湖理事長はこの日夜、帰省先の北海道から東京に戻り、緊急会見した。額に汗をかきながら「あってはならないこと。大変申し訳ございませんでした。事実関係を把握した上で、協会として厳正な対応を考えます」などと声を震わせ、一両日中に臨時理事会を開いて若ノ鵬容疑者を処分する意向を示した。また、同容疑者は事件当時に未成年だったが「幕の内の関取ですから、重く受け止めなければいけない」とも話した。

 今年2月には時津風新弟子死亡事件で幕下以下の力士3人が逮捕され、後に起訴された。この際に協会は「有罪確定なら解雇」の処分を下したが、同容疑者は20歳になったばかりとはいえ、協会から給与を受け取り、力士の手本となるべき関取の立場。起訴を待たずに力士では初めてとなる解雇を含めた厳罰が予想される。同時に間垣親方の理事降格は避けられず、部屋の存続も危うい状況に追い込まれた。