<大相撲名古屋場所>◇9日目◇21日◇愛知県体育館

 西前頭4枚目の豪風(尾車)が、横綱日馬富士(30)を押し出しで破り、35歳1カ月の最年長初金星を挙げた。今場所4日目に弟弟子の嘉風が樹立した32歳3カ月27日の記録を、わずか5日で更新した。食事は脂ものを控え、禁酒も徹底する節制ぶりで躍動感あふれる相撲を見せている。

 迷いがなかった。豪風は当たって、すぐに左に動いた。「何をやるにしても、思い切ってやろうと思った」。体勢を崩しながら振り向いた日馬富士に、反撃のスキは与えない。素早く追い詰め、押し出した。

 35歳1カ月での初金星は1958年の年6場所制以降で最年長。わずか5日前、32歳3カ月27日で同じ日馬富士に勝っていた弟弟子・嘉風の記録を更新した。取組直後に「抜かれた~。早いな、抜かれるの」と、苦笑いで悔しがった嘉風のことなどどこ吹く風。「弟には申し訳ないけど、アニキのオレがっていう気持ちでした。記録を塗りかえる日だなと思っていた」と、ドヤ顔で胸を張った。

 幕内で2番目に低い171センチ、151キロの体が、35歳でも衰えない理由がある。場所中の食事は、大好きなから揚げ以外の脂ものは口に入れない。「ビールも1杯目はうまいけど、番付発表後は飲まない」。肝臓の負担は、全身疲労につながるため禁酒を徹底する。

 ストイックな男の現在のテーマは「体を鍛えるより、どう回復させるか」。アイシングに注目し、部屋に帰ると水風呂で疲れを取る。今場所は、若い衆と同じ大部屋で仕切りをつけての生活で午後11時に就寝。睡眠を邪魔されないよう耳栓をつけて布団に入っている。

 今日10日目は結びでの白鵬戦。狙うは、今場所大砂嵐も達成した2日連続金星だ。「エジプトに持っていかれた記録を日本に取り戻します」。ベテランの目が鋭く光った。【木村有三】