【上海(中国)23日=佐藤隆志】競泳界のキング、男子平泳ぎの北島康介(28=日本コカ・コーラ)が、世界のひのき舞台で自己記録の更新を誓った。ロンドン五輪出場のかかる世界選手権は今日24日に開幕。初日の100メートル予選から出場する北島は、会場の上海オリエンタルスポーツセンターで最終調整し、練習終了後に「ベスト記録を更新したいな」と大きな目標を掲げた。08年北京五輪以来となる3年ぶりの大舞台。上海からロンドンに向け、いよいよ北島の五輪ロードが幕を開ける。

 余裕の笑顔にも、ワクワク感が伝わってきた。プールから引き揚げてきた北島は、努めて冷静に、リラックスした様子で話した。

 北島

 世界選手権は自分のレースをするのが大事。いろいろ予選泳いでから考えるよ。根拠のない自信できているから。あとは雰囲気を楽しみながらやるだけ。今季一番の戦いだし、ベスト記録を更新したいな。

 さりげなく、気負いのない口調で「自己記録の更新」という言葉が飛び出した。自己ベストは08年北京五輪で金メダルを獲得したときに出した当時世界新記録の58秒91(現在4位)。ここ一番で勝負強さを発揮してきた。その北京五輪までは平井伯昌コーチとの二人三脚で自らを追い込み、世界の頂点を極めた。今回は自らの頭で考え鍛えるという新たな取り組み。しっかりと戦う準備は整ったようだ。

 勝負の世界に戻ってきた喜びも実感している。男子3メートル板飛び込みの寺内健は、大の仲良し。北京五輪後に引退した寺内に「健ちゃん、また一緒にやろうよ」と声をかけ、競技の世界に連れ戻したのが北島だ。その寺内は21日の準決勝。最終6本目に失敗し、五輪出場枠入り(決勝12人)を土壇場で逃した。北島は「五輪が見えるとダメだったね」と言いつつ、「僕もこの舞台に戻ってきたことがうれしい」。再び日の丸をつけて戦える喜びが大きな刺激となり、気分は日増しに高まっているようだ。

 3年ぶりの大舞台には「予選、準決勝、決勝と3発も泳げるかな。でもファイナルに合わせてうまく泳ぎます」。100メートルで自己記録を更新とは、高速水着時代にリカード(オーストラリア)がつくった58秒58への挑戦も意味する。気負わず、おごらず、それでいて記録も狙う。強い北島が、再び世界のひのき舞台で見られそうだ。【佐藤隆志】