<都市対抗野球:ホンダ4-2トヨタ自動車>◇1日◇決勝◇東京ドーム

 ホンダ(狭山市)がトヨタ自動車(豊田市)との「ハイブリッドカー対決」を制し、96年以来13年ぶり2度目の優勝を飾った。今秋のドラフトで巨人が1位指名する方針の3番長野久義外野手(24=日大)は3回に2点中前適時打を放ち勝利に貢献。大会通算19打数11安打の打率5割7分9厘で首位打者に輝いた。MVPに当たる橋戸賞は、ホンダ・筑川利希也投手(27=東海大)が獲得した。トヨタ自動車は先発のドラフト候補右腕、大谷智久投手(24=早大)が4回3失点で降板。悲願の初優勝を逃した。

 流れ落ちる涙が、長野から歩く力を奪った。優勝を決めたナインがつくる歓喜の輪に、向かう1歩が踏み出せない。グラブで顔を覆い、守備位置の右翼から両脇を抱きかかえられてマウンドに向かった。「日本一になるために練習してきて、狙って優勝できたのがうれしかった」とかみしめた。

 待ちこがれた舞台で、結果を出した。1点先制した直後の3回2死二、三塁。4球内角を攻められ、ファウルを挟んだ6球目。真ん中高めの直球に踏み込んだ。「(内角攻めは)気になりません」と中前にはじき返し、2者を迎え入れた。大会通算5割7分9厘。社会人ラストサマーで、文句なしの成績を残した。

 昨年の都市対抗は準決勝で敗れた。巨人入りを熱望し、06年の日本ハムに続き、昨年はロッテの2位指名を拒否。「ホンダでやり残したことがある」と繰り返した。来年は25歳。プロ入りしていればの声は、耳に届く。「1年ボーッとしていたわけではないので」の言葉にプライドがにじんだ。

 自動車業界のライバルとの決勝に勝ち、会社への恩返しは果たした。もう忘れ物はない。胸を張って「巨人の星」への道を歩んでいく。【前田祐輔】