先日、この欄で触れたマツダスタジアムでの「ピースナイター」に行ってきました。「原爆の日」の8月6日にちなんで、監督、選手ら全員が86番をつけ、背中には選手名の代わりに「HIROSHIMA」の文字が。やはり、特別なムードでした。

 試合は阪神岩貞、広島藪田の若い両先発投手が踏ん張れず、マートンが3安打するなどで阪神の圧勝。人情として、この日ばかりは広島の勝利を願った野球ファンも多かったでしょうが、そうはいかないのがプロの世界、勝負の世界。でも勝敗とは違うところで意義ある取り組みだったと私は思います。

 来季以降、同じ機会があれば相手チームもカープに合わせて、何か趣向を凝らせば、さらにいいのではと思います。

 6日の午前中、そのマートンが、平和記念式典が行われた平和記念公園に足を運んでいたことが明らかになりました。

 練習が終わった後には虎番記者たちの取材を受け、「日本に6年いるけど、なかなか行く機会がなかった。8月6日に広島にいるのだから、行かせてもらおうと思ったんだ。世界平和を祈りたい」などとコメントもしました。

 野球記者になったときによく思ったことがあります。セ・リーグの球団、特に広島に所属する米国人選手たちは、このことをどう思っているんだろう、と。

 もちろんスポーツと政治は別です。でも、どんな思いがあるのか、聞いてみたいなと考えたことも正直、あります。だがなかなか簡単なことではない。それだけに今回のマートンの行動は、画期的で賛成したいと思います。

 朝からホテルのテレビで平和記念式典を見て、高校野球の開会式を見て、それから知人となじみの広島焼き(広島風お好み焼き)の店に出掛けました。

 いつもの「スペシャル」(関西で言うモダン焼)を頼んだら店員さんがなんだか改まった調子で「マヨネーズで文字を書いてもいいですか?」と聞いてきます。

 「どうぞ?」と答え、運ばれてきたスペシャルには「PEACE」の文字が筆記体で乗っていました(写真)。この店は、阪神や他球団の選手も訪れる結構な人気店です。ある意味、特別な趣向を凝らす必要もないし、さらに言えば正直、おしゃれな店でもない。

 それでも8月6日を強く思っているんだなと感じ、なんだか、よくぞ書いてくれましたと思い、ありがたくいただきました。味はいつも通りでおいしい。

 9日は長崎の「原爆の日」、そして15日の終戦記念日と夏は考えさせられます。特に今年は。野球を楽しめる今に感謝したいと、そう強く思います。