みなさま、新年おめでとうございます。と言っても、さまざまな事情で新年を喜べない方々も、多くおられると思いますので、淡々と筆を進めたいと思います。本年もこのコラム、よろしくお願いいたします。

 昨年は本欄で書きまくったように広島カープの年でした。緒方監督が発した「神ってる」の言葉は、ここで予言したように流行語大賞も獲得。乗りに乗っている年でした。

 今年も広島には日本一を目指し、頑張ってほしいですが、なんと言ってもセ・リーグでは阪神に頑張っていただきたい。

 いつも思っていたのですが「神ってる」の前に「阪」の1文字を加えると「阪神ってる」となります。

 球団名に「神」が入っているのは阪神だけなので、こうなるのは当たり前ですが、なんとなく縁起が良いような気がしませんか。しないですか。

 「ハンシンってる」ではさすがに分からないので「トラってる」とか何とか、どう読むかは人それぞれですが、とにかく金本監督2年目の阪神にも頑張ってほしいのです。

 そこで私が、今、気にしていることはズバリ「阪急の○い」です。勝手に名前をつけました。

 新年からおどろおどろしいので、あえて伏せ字にしましたが○の中に入るのは例の大リーグ、シカゴ・カブスにあった「ヤギの○い」と同じ字です。

 このオフ、阪神はオリックスからFAで糸井を補強しました。そのスピード、打撃力を攻撃の起爆剤にというわけで、金本監督たっての望みで獲得したわけです。

 ひょっとして若い人は知らないかもしれませんが、オリックスの前身は言うまでもなく阪急ブレーブスです。

 その強さで長らくパ・リーグの雄であった阪急ブレーブスでしたが、人気面では同じ兵庫県西宮市に本拠地のある阪神にかなわなかった。

 阪急の選手の中には「現役最後はお客さんが入る阪神でやってみたい」という願望があった、という話も聞いたことがあります。もちろん人によりますが。

 結局、お金のもうかる球団になれなかった阪急はオリックスに球団を売却します。

 阪急の傘下には「宝塚歌劇団」がありますが、球団売却当時は「野球より歌劇を選んだ」などと言われたものです。

 そんな経緯もあってか、過去を振り返るとオリックス時代になってからFAなどで阪神に移籍してきた選手は数多い。

 しかし、あえて名前は挙げませんがこのルートで移籍してきた選手たちで、古巣にいたとき以上に活躍した人はいません。

 もともと難しいFA移籍ですが、特にオリックス→阪神という移籍は成功することが困難なケースだと言えるでしょう。

 実際の理由は分かりませんが、場所は近いのに大きく異なる環境面なども影響しているとされます。

 FA自体、成功例はそれほど多くない。その中の1つは星野仙一監督時代に、移籍してきた現監督の金本知憲だと思います。当時と同じような期待が現在、かかっていますが、金本は同じセ・リーグである広島からの移籍でした。

 阪急と阪神には別の側面もあります。05年ごろ、投機筋による阪神電鉄買収の危機に端を発して、現在、阪神球団を傘下に収めているのは阪急阪神ホールディングスです。

 かつてオリックスに球団を売却した阪急が、経営の形はともかくタイガースを傘下に収めるという形になって、もう10年が過ぎました。

 こうやって振り返れば、阪急=オリックス、阪神にはさまざまな因縁があります。

 もちろんこれは直接プレーに関係ありませんが、そんなものを乗り越え、糸井が活躍できるかどうか。これで阪神の状況は大きく違ってくると思うのです。

 もっとも糸井に関していえばプロ野球のスタートは日本ハム。阪神に移籍したといっても、これまでと違うルートでもあるわけで、ここは、ぜひ頑張ってほしい。

 新年から思い切り「ねごと」で失礼しました。カブスも昨年、ヤギを振り払いました。本心から糸井も、阪神も、そしてオリックスも、輝かしい2017年になることを祈っております。