<センバツ高校野球:愛工大名電8-0宮崎西>◇25日◇1回戦

 やはり「ビッグ3」はすごかった。愛工大名電(愛知)の浜田達郎投手(3年)が宮崎西を相手に3安打無四球完封。両コーナーに投げ分ける抜群の制球力で14三振を奪った。

 甲子園デビュー戦は、わずか95球で締めた。愛工大名電のエース浜田が二塁も踏ませず3安打、14奪三振の完封勝ちだ。花巻東(岩手)の大谷、大阪桐蔭・藤浪と並ぶビッグ3の一角として注目された左腕は、注目を力に変えた。

 「お客さんが多くて甲子園は気持ちよかったです。三振は特に狙っていたわけではないです。コーナーを丁寧に突いたら、その数になっていました」

 4回表までに7三振を奪うと、その裏のベンチで「今日はコントロール重視。山本昌(中日)でいく」とナインに宣言。この日、最速は自身の147キロに及ばない140キロ。内外角の低めに投げ分け、鋭く曲がるスライダーで封じ込んだ。

 スピードだけではダメ-。初日に観戦した花巻東・大谷-大阪桐蔭・藤浪の投げ合いでの教訓を得た。「2人とも思ったよりコントロールが良くなかったですね」。リズムを心がけ、この日は無四球。ボール3さえ1度もなかった。倉野光生監督(53)は「その日のコンディション、試合状況に応じて投げられるようになった」と目を細める。

 常にポーカーフェース。物事に動じないのが最大の長所だ。観客席で応援していた父博さん(47)は「悔しいという感情を表に出さない子。親にはもっと素直になってほしいのですけど」と苦笑い。1年の秋季東海大会は準決勝、昨夏は愛知大会決勝で敗れ、三度目の正直でたどり着いた夢のマウンドでも感情は抑えた。

 大先輩イチローがマリナーズの一員として日本に凱旋(がいせん)中。先日、イチローが日本でオフに使用していたダンベルセット(約20個)がチームに届けられた。浜田は17日の甲子園練習で、21年前にイチローが着た「1番」のユニホームを着て魂を受け継いだ。「どこかで見てくれているとうれしいんですが…」。学校創立100周年を迎える節目。偉大な先輩もなしえなかった優勝に怪腕が挑む。【坂祐三】

 ◆浜田達郎(はまだ・たつろう)1994年(平6)8月4日、名古屋市生まれ。小学5年で、ときわイーグルスで野球を始める。長良中は硬式の名古屋ファイターズでプレー。愛工大名電では1年秋からエース。183センチ、88キロ。左投げ左打ち。家族は両親と姉、弟。趣味は音楽鑑賞。