<センバツ高校野球:履正社11-0小山台>◇21日◇1回戦

 都立の星が一矢を報い、短い春を終えた。21世紀枠で初出場の小山台(こやまだい=東京)は大敗し、都立勢の甲子園初勝利を手にできなかった。打線は8回まで失策の走者1人しか出せなかったが、竹下直輝外野手(2年)が9回1死からの三塁内野安打でノーヒットノーラン負けを阻止。主将兼エースの伊藤優輔投手(3年)も8三振を奪って完投し、全力プレーで満員のアルプス席を沸かせた。

 諦めない、意地の1本だった。完敗ムード漂う9回表1死。代打の竹下が放った打球は、フラフラと投手後方に上がり、三塁手と遊撃手の間にポトリと落ちた。「自分の足ならセーフになると思って全力で走りました」。塁審の両手が大きく広がり、「セーフ!」の声。三塁側の最上段までびっしり埋まったアルプス席から地響きのような歓声が飛んだ。

 溝田の鋭い変化球に手も足も出ず、8回まで無安打に抑えられた。一方で出場校中トップの奪三振率を誇るエース伊藤は8奪三振も、独特の雰囲気に戸惑い、10四死球と制球が定まらなかった。「気持ちが前に行きすぎて、力みすぎました」。2回に1死満塁からの押し出し四球で先制点を許し、2番辻には満塁本塁打を浴びた。2月9日の練習では143キロを計測。自己最速を一気に4キロ更新し、復調気配も、136キロ止まり。昨秋の都大会後に右脇腹を疲労骨折したことで十分投げ込めなかった影響なのか、球威も欠いた。「気持ちをコントロールできなかった。(内容は)30点です」と厳しく評価した。

 都立校初のセンバツ出場に約3800人の大応援団が駆け付けた。出場決定後はさまざまな贈り物が届き、卒業生の母親が園長を務める幼稚園からは「応援歌」が届いた。園児たちが歌った「大きな歌」のCDだった。

 ♪大きな

 夢だよ

 このぼくの

 この胸に

 いっぱい

 広がる

 大きな

 夢だよ♪

 ナインは関西入り後、夜のミーティングで聴き、思いを背負い、勇気をもらった。福嶋正信監督(58)は「21世紀枠として感動を与える試合ができず残念ですが、本当に感謝しています。甲子園はいい場所ですね。もう1度、来たいです」。チームを鍛え直し、また夢を追いかけることを誓った。【和田美保】

 ◆代打が阻止

 センバツで代打がノーヒットノーランを阻止した主な例では、72年に山内倫也(松江商)が仲根正広(日大桜丘)から9回先頭打者で右前安打。09年には高地紘平(鵡川)が菊池雄星(花巻東)から9回1死、左前安打で意地を見せた。