広島黒田が今年も男気(おとこぎ)あふれる投球で、チームに今季初勝利をもたらした。7回を投げ、9安打されながら1失点。試合後の表情は安堵(あんど)感に満ちていた。

 「若いころは相手を牛耳る投球を目指してやってきた。今はそれができない。頭を切り替えて、大事な場面でなければヒットはOK。結果が出ればいい」

 2回以降は毎回安打を許した。中軸だけでなく、下位打線の新人にも痛打された。「いい時と比べれば物足りない。でも、ぜいたくは言っていられない」。打者の手元で球を動かしながら、スライダーとスプリットを中心に粘った。

 球場を真っ赤に染めたファンに勝利を届けたかった。黒田は可能な限りサインをする。9年ぶりに訪れた宮崎・日南での春季キャンプでは40分間ペンを握ったこともある。元ヤンキースのデレク・ジーター氏が「ANY TIME OK」とサインに応じていたのがベースにある。ファンのためだけではない。「次の世代の選手に、そういう姿を見せておかないといけない」と黒田は言う。結果が何よりのファンサービス。言葉だけではなく、背中で伝えてきた。

 そんな思いが、好守と逆転を呼んだ。緒方監督は「見ての通り、黒田がヒットをたくさん打たれながらも粘り強く投げてくれた」とたたえた。日米通算194勝目にも「みんなが1つになって戦っていかないと上位にはいけない」。男気の視界には、チームの未来が映っている。【前原淳】