ドラ1で5割だ。西武多和田真三郎投手(23)が、本拠地での中日戦に先発。8回を散発3安打、無失点に封じ、延長12回サヨナラ勝ちを演出した。最速146キロの直球を軸に、横滑りのスライダーで翻弄(ほんろう)。ストライク先行で危なげなかった。秋山翔吾外野手(28)のサヨナラ打で好投が報われ、最大9あった借金は完済。投打のかみ合った獅子が巻き返す。

 はにかんで、少しぎこちなかった。「祈る思いで」延長12回の攻防を見ていた多和田は、秋山のサヨナラ打を見届けベンチから飛び出した。一番乗りは遠慮して、後方から歓喜に飛び込んだ。「今日をきっかけにできれば」。初めてつかんだ手ごたえをかみしめた。

 初々しい幕切れと裏腹の、堂々たるマウンドだった。4度の先発で結果を出せなかった。6日に昇格後初めての散髪。試合前のブルペンは球数を普段の1・5倍、30球に増やした。「腕を振ることを意識して。初回から全力で」。リミッターを外して中日に挑んだ。

 多和田流で圧倒した。1回のマウンドなのに、右膝から下が土でべっとり汚れていた。踏み出した左足に乗っている時間がとりわけ長く、なかなかボールを手放さない。長い球持ち、右腕が地面に当たりそうな振り抜き。強烈なスピンをかけた。球速よりもずっと速く直球を見せ、課題だった左打者へも「どんどんインコースを攻めた」。ストライク先行の軸球はもちろん、何より際立ったのはスライダーだった。

 柔らかな股関節にパワーを蓄え、一気に切り返し、豊かな可動域の肩甲骨を振った。文字通り横滑りにスライドし、曲がり出しが遅く、曲がり幅がとりわけ大きい。往年のヤクルト伊藤智仁をほうふつとさせるブーメランの軌道は、ベテラン荒木の反応がその威力を物語っていた。第2打席の3球目にタイミングの合わないファウル。この1球を足がかりに、カウント球でも勝負球でも活用した。8回2死の場面では、全7球中6球がスライダーという徹底ぶりで空振り三振。ここでお役御免となった。

 西武のドラ1投手は、やはり本物だった。田辺監督は5割復帰の立役者を「言うことなし。これだけのピッチング。当然、次となる。最大で(借金)9あった。コツコツと、1つ1つ重ねていく」と輪に加えた。多和田をキーマンに上位を追う。【宮下敬至】