サヨナラ敗戦の直後、阪神高山は仏頂面のままバスへの帰路を引き揚げてきた。逃げ切っていれば文句なしのヒーローだ。あっけなく敗れた。土壇場での一撃は報われなかった。それでも確かなことがある。もはや「ルーキー」の枠でくくれない。ヒットマンの力量が鮮烈に輝く札幌の夜だった。
1点を追う8回1死二、三塁。相手は日本ハムの鉄壁リレーをになうマーティンだ。150キロを軽々と超えてくる。しかも、203センチの長身がそびえ立つ。カウント2-2からの5球目だ。外角低めへの154キロ剛速球にバットはピタリと止まる。立ち合い負けせずに間合いを測れている証拠だろう。その直後、内角高めのカットボール系に腕を畳みながら、ライナーで左翼線へ。芸術的な弾道を描く逆転2点打を見舞った。
充実した打撃内容に目を見張るのは金本監督だ。敗北直後、話題の大半は高山についてだった。「セットアッパーから逆転したのは今季初めてじゃない? ズルズル負けるパターンだったけど、反発力があるチームになっていくために自信をつけてほしい。勝ちパターンから逆転したわけだから。今後、セットアッパーが来ても期待できる。前向きにとらえたい」と話す。
速い球をとらえるため、遅い球にも向き合う。この日の試合前練習では打撃投手に珍しく緩い球を要求して打った。2戦連続無安打で人知れず修正する。片岡打撃コーチも「最近、受け気味になっていた。今日はボールの前でたたきに行けた」と評価した。2回に初球攻撃で左翼線を破る先制の適時三塁打を放つなど、この日は5月21日の広島戦(甲子園)以来、今季5度目の猛打賞だ。高山は逆転打を「前の球を見極めたどうこうより、あの打席はしっかり結果が出たことだけ」をさらりと振り返る。二塁ベースに立ち、派手に喜ばないところも頼もしい。
不慣れなはずの外国人相手に46打数15安打、打率3割2分6厘と、助っ人キラーぶりを示す。3月のオープン戦ソフトバンク戦で剛腕サファテに歯が立たなかった姿は、いつの間にか消えた。日を追うごとに、不動のレギュラーへと成長している。【酒井俊作】
▼阪神高山が5度目の猛打賞。この日はメンドーサから2安打。さらにマーティンからも二塁打。これで外国人投手との対戦は15人目で、10人からヒット。合計46打数15安打で打率は.326。このうち右投手からは28打数10安打で打率.357。左投手は18打数5安打で打率.278。



