千両役者で優勝マジック3だ! 日本ハム大谷翔平投手(22)が楽天戦(札幌ドーム)で、劇的なサヨナラ勝利を演出した。1点を追う8回に同点適時打を放ち、延長11回には中越え二塁打でチャンスメーク。2死三塁から、相手暴投で生還した。今季9度目の猛打賞で、4年目で初のシーズン100安打に到達。チームは04年の本拠地移転後、初めて主催試合の観客動員数が200万人を突破した一戦で、球団新のシーズン84勝目。ソフトバンクが敗れ、優勝マジックを2つ減らした。

 滑り込むと同時に、両腕を突き上げた。大谷がサヨナラのホームを踏み、歓喜のウオーターシャワーを全身で浴びた。「(手荒い祝福を)これなら何回受けてもいいです。すごくうれしい」。中越え二塁打で出塁した延長11回。三塁まで進み、暴投による生還で3時間48分の熱戦に終止符を打った。

 大歓声を一身に受けた。1点を追う8回2死三塁。代わったばかりの楽天ミコライオの初球を、中前にはじき返した。起死回生の同点打。「いい具合に(バットの)先っぽに当たってくれた」。右拳で何度もガッツポーズをつくった。

 4年間で1打席の対戦経験しかない投手へのスイッチ。すぐに23日に対戦していた西川に傾向を聞くため、ベンチへ戻った。求めたのは変化球の曲がりや軌道。インターバルで頭を整理し、151キロのツーシームを一振りで仕留めた。猛打賞で今季102安打。初めて大台に到達した。

 23日のカード初戦は、欠場を命じられた。「出たい」気持ちは、いつでもある。栗山監督に、思いをぶつけたこともある。だが1カ月半もの間、先発ローテを離脱した悔しさが、考えを変えた。「代わりに出た選手が頑張ってくれる。(V争いは)全員がしっかりと役割を果たしてきた結果だと思う」。マジックはついに「3」となった。

 長時間ゲームの影響で大阪移動を断念。今日26日オリックス戦(京セラドーム大阪)は午前中に移動するハードな日程を強いられる。栗山監督は「移動ゲームじゃなかったら使おうとは思ってた。…考えます」。野手出場に慎重な姿勢ではいるが、一気に頂点に駆け上がるためにも、出場に踏み切る可能性は高い。残り1回の先発登板も控えている大谷は「明日勝ちにいくだけ。それだけ考えています」。次はビールを、ありったけ浴びる。【本間翼】

 ▼大谷が3安打を放って今季9度目の猛打賞。これで今季の安打数は102本となり、4年目で初めて100安打を突破した。現在、大谷は投手で9勝。9勝以上したシーズンに100安打は、10勝で109安打の49年野口(阪急)以来、67年ぶり。この野口を含めて1リーグ時代には「2桁勝利+100安打」が3人(4度)いるが、「2桁勝利+100安打+2桁本塁打」はまだいない。なお、2リーグ制後は100安打したシーズンに白星を挙げたのが51年藤村富(阪神=131安打で1勝)と大谷だけ。

 ◆大リーグでは レッドソックス時代に二刀流で活躍したベーブ・ルースも「2桁勝利・2桁本塁打・100安打」は1度も達成していない。1918年は13勝し11本塁打を記録したが95安打だった。翌19年は29本塁打で139安打を放つも9勝どまりだった。