その名を刻め。広島田中広輔内野手(27)が球団3人目となる、遊撃手としての年間フルイニング出場を視界にとらえた。残り2試合を乗り切れば、86年高橋慶彦、94年野村謙二郎に次ぐ快挙。痛みに負けそうになったこともあったが、こだわってきたフル出場。CS、日本シリーズも、「1番遊撃」で引っ張る。

 夏に逆戻りしたような強い日差しを受け、田中はたっぷりかいた汗をぬぐった。目標を完全にとらえた視線はいつにも増して力強く、真っすぐだ。ここまで開幕から141試合でフルイニング出場を続けてきた。残りは2試合。目標にしてきた全試合フルイニング出場は、もう目の前だ。

 「僕はそこを最大のモチベーションにしています。あと2試合、しっかりやりたい。こだわって目標にしてきた数字なので」

 6文字に集約出来るほど、フルイニングは簡単ではなかった。「体がおかしいと思ったこともありましたよ」。17死球はリーグ最多。8月には「ふくらはぎがとてつもなく痛かった。テーピングでしのいだけど…」。三遊間の打球の処理に、体が悲鳴をあげていた。「腰が抜けたこともあった」。それでも、ショートの守備位置に立ち続けた。

 広島のユニホームを着たときからの目標だった。「体が強いということだし、なんと言っても、出ないと評価されない世界なので」。自分からは、出られないとは「絶対に言わない」。レギュラーは簡単に奪えない。だから休まない。意地とプライドで高橋慶彦、野村謙二郎のレジェンドに肩を並べた。残り2試合に油断はないが「名誉なこと」と少しだけ胸を張った。

 打っても全試合に1番で出場。切り込み隊長として「ビッグレッドマシンガン」を引っ張った。目標はCS突破、そして日本一へ。「一発勝負も変わらない。自分の仕事をしていくだけ。出塁率と得点。あとはいいところで打てれば」。出続けることでしか分からないことがある。「(阪神)鳥谷さんの10年連続というのは僕からしたら考えられない。本当にすごい」。自信をつけ、一回り大きくなった田中。広島の歴史に名を刻む。【池本泰尚】