巨人がFA戦士のハートを射抜いた。フリーエージェント(FA)宣言選手の交渉解禁日となった11日、DeNA山口俊投手(29)ソフトバンク森福允彦投手(30)にダブルアタックをかけた。初交渉の席上では宮崎秋季キャンプ中の高橋由伸監督(41)が電話でラブコールを送り、山口からは「前向きに考えさせてもらいます」と好感触の言葉を引き出した。山口には3年総額約6億円、森福には3年総額約4億円を提示した模様。最終結論には至っていないが、ダブル入団へ大きく前進した。

 約1200キロの距離を超えたホットラインを通じ、赤い糸が結ばれた。午後5時10分ごろ。あらかじめ堤GMから「空けておいて」と指定された時間を受け、練習中の高橋監督が球団関係者の携帯電話を手に取った。「先発として完投できるところに魅力を感じている。一緒に強いチームを作って優勝しよう」。宮崎から届いた指揮官の肉声を都内ホテルで聞いた山口は「前向きに考えさせてもらいます」と入団に向け、極めてポジティブに返事した。

 巨人の熱意をストレートにぶつけた。今季自身最多の11勝で特に5完投3完封のタフネスぶりを絶賛した。「絶対ほしい選手」と強調した堤GMがチームの完投数などデータを提示し、山口の希少価値を評価し、必要性を訴えた。初のFA交渉で緊張していた右腕も「自分のこだわっていた先発で評価してくれた。(誠意は)すごく感じた。本当に第一に考えてもらっている」と笑顔。8日に涙でFA宣言を表明した時とは表情が一変していた。

 山口の交渉前には福岡で森福とテーブルに着いた。堤GMが「複数の球団からオファーがあるだろうし、うちは一番に、ほしいんだよという気持ちを伝えたいと思い、同時にやった」と誠意を等しく伝えるため異例の同日交渉を仕掛けた。背番号13も提示し、高橋監督も電話で「来年の優勝に向けて力を貸してほしい」とラブコール。森福も緊張からか「ハイ!」と受け入れたと思われそうな返事をしたという。「まだ決まったと確定したものはない」と話したが「セットアッパーとして期待していると言われ、自分もやりたい気持ちがあったので、その言葉は本当にうれしい」と今季のソフトバンクでのワンポイント起用から、より重いポジションを想定されていることに感激した。

 遠隔交渉に臨んだ高橋監督は「力になってほしい? そうですね。補強していくところは補強して、育てていくところは育てて」とクールに戻ったが、2人の心には口説き文句は突き刺さった様子。巨人が来季の3年ぶりリーグ優勝へのキーマン2人を獲得できる日も近そうだ。【広重竜太郎】

<巨人のFA交渉ダブルアタックの1日>

 午前10時50分 堤GMが福岡市内のホテル入り。

 午前11時56分 森福がホテル入り。交渉開始。

 午後0時10分 宮崎の高橋監督から森福に電話。

 午後0時21分 交渉後、森福、堤GMが囲み会見。

 午後2時 堤GMが福岡空港発の航空機で帰京し羽田空港から都内ホテル直行。約1100キロの移動。

 午後4時58分 山口が都内ホテル入り。交渉開始。

 午後5時10分 約1200キロ離れた宮崎の高橋監督から都内の山口に電話。

 午後5時35分 交渉後、山口、堤GMが囲み会見。