17年は「勝ち続けなきゃならない」。阪神藤浪晋太郎投手(22)が来季、登板時の登場曲をMr.Childrenの「僕が僕であるために」に変更することを明かした。尾崎豊の名曲をミスチルがカバーしたもので、7勝に終わった今季からの巻き返しを期す右腕にぴったりの曲。熱い歌詞に気持ちを高ぶらせ、逆襲ロードを突っ走る。

 静寂に包まれた甲子園。藤浪が一塁側ベンチからグラウンドに足を踏み入れた瞬間、ミスチル桜井和寿の高音ボイスが球場に響き渡る。「ボクゥ~がボクゥであるために~…」。熱い歌詞が逆襲の合図だ。勝負の5年目、登板時の登場曲を初めて変更する。

 「1年目から変えていなかったんですけどね。今のところ、来年は変えようと思っています。歌詞がいいなと思って」

 打席に入る際の登場曲は毎年変更してきた。一方で、マウンドに上がる時の曲は1年目の13年から一貫してMr.Childrenの「PADDLE」を使用してきた。今季は7勝どまり。逆襲にかける思いが、BGMチェンジに踏み切った理由のひとつに違いない。

 新たな登場曲はMr.Childrenの「僕が僕であるために」。尾崎豊の名曲をカバーしたメロディアスなバラードだ。サビ部分の歌詞が藤浪のハートに突き刺さった。

 僕が僕であるために

 勝ち続けなきゃならない

 正しいものは何なのか

 それがこの胸にわかるまで

 今季はほろ苦い1年だった。右肩炎症の回復を最優先して、2月の沖縄・宜野座キャンプはスロースタート。シーズンでは大黒柱の役割を期待されながら、他球団エースとの投げ合いで苦戦が続いた。立ち上がりから打ち込まれるシーンも目立ち、昨季14勝から大きく勝ち星を減らした。

 周囲からの批判の声も少なからず聞こえてきた。苦悩し、猛省を繰り返した。自分を信じなければ前には進めない。80年代から90年代にかけ、社会の波にもまれる若者のカリスマ的な存在だった尾崎豊が刻んだ歌詞と、自身の胸中をリンクさせて腕を振る。

 27日に初ダウンで契約を更改し「優勝を目指して、しっかり頑張れるように」と決意表明した。12年ぶりのV奪回へ。勝ち続けるために、マウンドに向かう。【佐井陽介】

 ◆藤浪の登場曲 学生時代から大ファンというミスチルの楽曲を中心に使用してきた。登板時は1年目から今季までMr.Children「PADDLE」を継続。打席に向かう登場曲は1年目の13年にGReeeeN「every」。以降はミスチルで14年は「Worlds end」、15年は「HOWL」、16年は「Tomorrow never knows」と毎年変更してきた。

 ◆尾崎豊(おざき・ゆたか)1965年(昭40)11月29日、東京都生まれ。青山学院高に在学中の83年に「15の夜」でデビュー。「十七歳の地図」「卒業」など、10代の苦悩や心の叫びを歌詞に乗せた曲でヒットを連発した。92年4月25日早朝、全裸で倒れているのが発見され、病院に搬送されたが肺水腫で死去。ファン葬には4万人以上が参列した。長男裕哉(27)もミュージシャンとして活動する。

<藤浪の16年>

 ◆白星発進も 3月29日ヤクルト戦の今季初先発は9回途中2失点。完投まであと1人で交代し「正直、完投できなくて悔しいのが一番です」。

 ◆1安打投球 6戦白星なしで迎えた6月2日楽天戦で9回を1安打無失点。ようやく4勝目を挙げる。

 ◆懲罰続投 7月8日広島戦の初回に四球絡みで3失点。金本監督が続投を命じ、8回まで自己最多の161球を投じた。

 ◆福留のゲキ 8月30日の中日戦で1回から満塁弾を浴びるなど7失点で自己最短KO。ベンチではベテラン福留が、ベースカバーを怠ったことを叱責(しっせき)。

 ◆160キロ 9月14日広島戦で自己最速を2キロ更新する160キロを計測。日本人3人目の快挙も今季最悪の6四死球で勝ち負けはつかなかった。

 ◆最後に一矢 9月22日、今季0勝4敗だった広島戦で9回1失点の完投勝利。「試行錯誤して、遠回りして、やっと最後にいい感覚が出てきました」。