<西武5-9ソフトバンク>◇21日◇西武ドーム

 ソフトバンク本多雄一内野手(23)が「安打製造器」と化した。6打数5安打1打点3得点とフル稼働だ。前日20日から球団タイ記録の8打数連続安打をマークし、打率は3割7厘に到達。2日で9安打、8月は打率4割5分9厘を誇るリードオフマンに導かれ、ホークス打線は毎回、今季7度目の先発全員となる17安打9得点の攻撃。チームの連敗を3で止め、単独2位キープの原動力となった。

 球団タイ記録に王手をかけて迎えた7回の5打席目。6球目のファウルで、ここまで使い続けたバットが折れたが、波に乗る本多には関係なかった。「変に意識せず、うまく生きられるかを考えていた」。谷中からあっさりと左越え二塁打。記録更新のかかった最終回は三ゴロに終わったが、不動のリードオフマンが8打数連続安打でチームを引っ張った。

 この日は6打数5安打1打点。「ヒットを打っている時は謙虚にいること」と本多は1打席ずつに集中。2回には一ゴロがイレギュラーして二塁打になる運も味方にした。五輪出場中の川崎とは私生活でも仲良しで、代表合流前にはチームを託された。8月は打率4割5分9厘、通算でも3割を超え、その思いに応えてみせた。昨年の球宴明けから使う重さ900グラムのバットを従来よりグリップを太めにし、長さも1センチ短い85センチにした。プロ3年目にして道具にもこだわりを持ち、安打製造器の精度を高める。

 本多のバットから響く快音に刺激され、打線は先発全員、毎回の17安打を放った。西武のお株を奪う攻撃で連敗を3で止め、王監督はご機嫌だった。「今日は点を取られた後に全部点が取れた。本多?

 最後は惜しかったが、日本記録という楽しみは先に残しておけばいいさ。あと32試合か、進むしかない。どんどんやっていこう」。試合前は卵焼きを乗せたそばを右手に、左手でおにぎりをほおばりながら「もうヤケ食いだよ」とベンチ裏の知人に漏らしていたが、本多のバットが気分を変えてくれた。

 日本がソフトボールで金メダルを獲得した日に安打記録をマークした本多は、母ひふ代さんがソフトの元国体選手という不思議な巡り合わせも感じていた。「のぼせずやりたいですね」。自力優勝の可能性が消えているが、謙虚な1番打者が単独2位を守ってみせた。【押谷謙爾】