<広島4-7阪神>◇21日◇広島

 また、新たな鉄人伝説が誕生した。阪神金本が3回にリードを5点に広げる20号3ラン。40代で20号本塁打を記録したのは、史上9人目となる。8回には同点の走者をホームで補殺するなど、20代顔負けの大活躍。五輪組の離脱などで、苦しみ続けた阪神は、同一カード3連勝で一気に息を吹き返した。22、23日は星野ジャパンの準決勝、決勝が行われるため、プロ野球はお休み。24日のヤクルト戦(神宮)から、虎は再びVロードを突き進む。

 ベテラン同士の絆はしっかりと結ばれていた。またもアラフォー世代が試合を決めた。下柳の40歳での10勝目をおぜん立てしたのは、同じ40歳の金本だった。

 2点をリードして迎えた3回。2死一、二塁から真ん中に甘く入ったカーブを見逃さなかった。高く上がった打球に、右翼アレックスは後ずさりした足を止めて打球を見送った。四球で出塁した2人の走者を本塁へと迎え入れる効率のいい3ラン。金本はゆっくりとダイヤモンドを回ってベンチに戻り、一番最後にハイタッチを交わした下柳に笑顔で言葉を投げかけた。

 金本

 (下柳を)あそこで勝たさんかったらうるさいから(笑)。走者が溜まった場面だったんでね。(本塁打は)結果的にね。

 11打席ぶりのヒットは5年連続となる20号本塁打。だが「20本?

 少ないよ」と、個人の節目の記録に関心は薄かった。3打点を挙げ、あと2打点と迫っていたプロ14人目となる通算1300打点をまたいだが、それよりも目の前のチームの勝利が大切だった。

 試合前、選手のロッカーでは、スコアラーが用意した、前回大竹と対戦した5月14日の広島戦(金沢)の映像が流されていた。練習を終えた金本は、前回2安打を放ち、大竹を攻略したイメージを膨らませ、試合に臨んでいた。そして頼もしい一打で勝利をたぐり寄せた。常に裏方にも気遣いを見せる主砲らしい“お礼”の一打で、下柳を楽にさせた。

 勝利への執念は守備でもみせた。1点リードの8回2死二塁。レフト前に転がった東出の当たりにすばやく反応すると、ワンバンドでホームに好返球。同点のホームを狙った梵を補殺した。「ちょっとそれたから60点」と謙そんしたが、広島リブジー監督代行が球審に抗議し退場になる中、喜びのハイタッチでナインに出迎えられた。

 前回の京セラドーム大阪で広島に3連敗。今回は敵地で3つ取り返したことに「大きいよ。その前も3連敗しているし、ものすごい大きいよ」と岡田監督もにっこり。「四球、四球、本塁打やったからなあ。あそこで5点あったからな。でも、よくしのいだという言葉に尽きるなあ」と、投打で勝利に貢献した金本をたたえた。

 これでチームは8月初の3連勝。そして、五輪で抜けていた仲間ももうすぐ戻ってくる。すべては3年ぶりの歓喜のため。強さを取り戻した猛虎軍団が、いよいよラストスパート体勢に入る。【福岡吉央】