<オリックス2-4ソフトバンク>◇17日◇スカイマーク

 ソフトバンクが劇的な逆転勝利で首の皮一枚残った。負ければロッテの勝敗次第でクライマックスシリーズ(CS)自力進出が消える可能性もあったオリックス戦。0-2の9回2死一塁から連打で1点を返すと、本多雄一内野手(23)が逆転3ランを放った。先発杉内俊哉投手(27)は8回7安打2失点(自責0)で2年連続の2ケタ勝利。連敗を5で止めた王貞治監督(67)は「これで流れが変わる」と目を見開いた。

 これが王監督の大好きな執念だ。1点を返し、まずは完封負けだけは逃れた9回。2死一、二塁で本多はカウント2-0と追い込まれた。捕手日高が立ち上がって構えた高めのつり球。それでも完全なボール球に食らいついた。「つないでもらい、僕で終わるわけにいかなかった。自分でも会心の当たりでした」。土壇場で逆転3ランが右翼スタンド中段へ吸い込まれた。

 負ければクライマックスシリーズ自力進出が消える可能性があった。初回、本多は先頭下山の二ゴロにバウンドを合わせられず、失策がついた。がけっぷちの一戦。緊張感が手元を狂わせ、杉内は2死からローズに先制2ランを浴びた。「初回の2点は僕のせい。流れを悪くした。最後に杉内さんに勝ちがついてよかった」。自らのミスも帳消しにする1発。ダイヤモンドを1周すると、中学時代の「大野城ガッツ」と鹿児島実の先輩に当たる杉内とベンチでがっちり握手した。

 9月は毎週水曜日にしか勝てず、これが3勝目(10敗)という低迷ぶり。ベンチ裏通路に出てきた王監督は「1週間ぶり?」と報道陣に確認するほど、チームは勝ちを忘れていた。この日も5回まで毎回先頭打者が安打で出塁したが無得点だった。「本当に何が起こるか分からない。流れをこうやって自分たちで変えていかんと。その点ではみんな頑張った」。

 15日ロッテ戦のこと。ベンチ裏にはすぐ飲めるようにジュースの入ったポットが6本並んだ。サロンまで戻らず、ベンチにいる時間をできるだけ増やし、チームの一体感を出そうとした。たかがドリンクだが、それほど危機感があった。「何とか流れを変えたかった」。思いを代表した本多の通算7号が連敗を5で止めた。

 順位は5位と変わらないが、まずは3位日本ハムと2・5ゲーム差と再接近。王監督は目を見開き、CS圏復帰へ大号令を出した。

 王監督

 こうなってみると1週間、選手も一生懸命やったかいがあった。いくらハッパをかけても現実的に自分たちが感じないとね。だいぶ遠回りしたが大きかった。我々の意地をみせる。このままじゃ今まで何をやってたんだとなる。8月までのが消えちゃう。これで流れが変わったと思う。明日完全に変えないと。

 9月に入り2位からまさかの5位転落。ここからミラクルが起きるとすればターニングポイントはこの試合になるはずだ。【押谷謙爾】