<阪神3-2巨人>◇7月31日◇甲子園
超満員のファンが目撃者だった。新たな「Gキラー」の誕生だ。巨漢のクレイグ・ブラゼル内野手(29)の横に並んで、阪神能見篤史投手(30)がお立ち台で喝采を浴びた。「チームが3連勝していたので、何とか流れを止めないように必死で投げた」。細身の体で、強力打線を再び封じ込めた。こんな痛快なことはない。球団46年ぶりとなる単一投手による3戦連続完封は逃したが、それに匹敵する価値ある快投だ。
今後の野球人生の分岐点となる1戦になるかもしれない。「今日が大事だ、と思った。だから本当によかった」。能見は違う自分を見せるために、あえて自分にプレッシャーをかけた。背信の投球を続け、中継ぎにまわされた7月初旬。久保投手コーチから1本のビデオをもらった。「お前はこれで先発ローテーションを勝ち取ったんだから」。そこにはオープン戦で好投する自身の姿があった。前回登板の7月19日巨人戦では9回を2安打無失点。左腕は初心に戻って、復活を果たした。
そして能見はこの日に賭けた。快投は続けてこそ意味がある。「7敗もしているから。毎回同じことをやっても、使ってもらっている」。6回のピンチ。坂本にソロアーチを浴びた。これまでなら、ズルズルと失点する場面だが、2死一塁でラミレスを直球で空振り三振。主砲のバットに3打席連続で空を切らせ、流れを断ち切った。プレッシャーを克服し、自己最多の5勝目を挙げた。8三振で通算109奪三振とし、中日吉見を抜いて、再びリーグ奪三振王に返り咲きもした。
控えめなヒーローはいつになく冗舌だった。「いろいろ考えてやっている。狩野もうまく引き出してくれるし。今日は1度もサインに首を振っていない。同じマンションに住んでいたし、お互いをよく知っているから」。かつてのもろさは表情から消えた。次の登板が待ち遠しい。能見はそんな投手に成長した。
[2009年8月1日12時7分
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