速い、重い!

 中日のドラフト1位岡田俊哉投手(18=智弁和歌山)が20日、ナゴヤ球場のブルペンで初めて投球練習を披露した。ベールを脱いだ“天才左腕”に、ベテラン山本昌ら先輩投手たちも熱視線を送った。回転がよく、ずっしりと重いボールにブルペン捕手からは新人離れしていると絶賛の声があがった。将来のエースと期待される“金の卵”が、強烈デモでプロの第1歩を踏み出した。

 細身の体をしなやかに使ったフォームから、岡田はボールをリリースした。「ナイスボール!」。受けたルイス・ブルペン捕手が思わず声を上げた。10日の新人自主トレ開始から11日目、ついに期待の左腕がベールを脱いだ。まるでボールが浮き上がるようなスピンの効いたボールがミットを小気味よく鳴らした。すると次第にブルペン周辺には人垣ができた。スカウト、報道陣だけでなく、山井、長峰…、そして名球会左腕山本昌まで岡田の投球練習を見つめていた。

 「最初は5、6割の力で投げていたんですけど、気持ちよくて9割くらいまで力を入れた。山本昌さんが見ていたのは知っていました。あそこから力が入ってしまいました」。

 プロ入り前から目標にしていた山本昌の視線を感じた岡田は、自然とペースアップした。徐々に力を込めながら、どんどん球数を重ねていった。あまりの熱の入れように、見守っていたスカウトが30球投げた時点で「もう、やめておけ」とストップをかけたほどだった。プロ初めての投球練習ながら周囲の視線にもまったく動じることなく、堂々たる投球を披露した。

 練習後、岡田の球を受けたルイス捕手はそのボールをこう表現した。「いい回転がかかっていて重い。体は細いのにあんなに球が重いなんて…。18歳とは思えない。プロで何年もやっている投手のようなボールだった」。山本昌、川上ら一流投手のボールを受けてきた男が最大限の賛辞を送った。球質をチーム内で例えるなら150キロ速球で打者をねじ伏せるセットアッパー高橋のような剛球だという。181センチ、68キロ。18歳の細身の左腕は完全に新人離れしていた。

 21日には卒業式など学校行事のため、和歌山へ戻る。「明日から帰るのでマウンドの感覚をつかんでおきたかった。本当に気持ちよかったです」。名門・智弁和歌山で2年生からエースとなった天才左腕はわずか30球で、強烈なインパクトを残した。【鈴木忠平】

 [2010年1月21日11時43分

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